米Foxネットワークテレビが3月下旬、新番組『Touch(タッチ)』をスタートさせたが、世界同時放送をすることになり話題をまいている。これまで米テレビ番組が世界市場に登場するのは米国でのプレミア後数ヶ月あるいは数年後というのが慣例だった。しかし今回、カナダをはじめ、ドイツ(Global Television)、ロシア(Channel One)などを含む約100ヶ国でほぼ同時に放送開始という異例の戦略に出た。日本では約半年後になるが、Wowowでの放送が決まっているという。
世界同時配信にはインターネット上の番組違法ダウンロードの防止策にもつながるというメリットがあるという。『タッチ』のクリエーター、ティム・クリング氏は以前、NBCネットワークで大ヒット番組となった『ヒーロー』(超能力が備わった様々な人々がヒーローとして活躍するドラマ)を手がけたが、当時同番組が放送されていなかったフランスで大勢のファンがいることを発見。違法ダウンロード対策を真剣に考えさせられるきっかけになったという。
そしてもう一つのメリットは、世界市場をにらんだ広告主を番組スポンサーとして確保できることだ。同番組のグローバル・スポンサーに名乗り出た世界的な家庭用品メーカー、ユニリーバの存在なしでは世界同時配信は実現しなかったという。スポンサー料などは公表しないスタンスだが、ユニリーバ社のマーケティング担当者は、「商品のグローバル化が日に日に進んでいる。我々にとっても、世界配信番組のスポンサーになることは、絶好のチャンスと捉えている」と抱負を語っている。米ネットワークテレビ各社は、海外市場からの収入増を追求する姿勢を鮮明にしているが、Foxネットワークのマーケティング部門責任者、ジョー・アーリー氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「今後他社も含め、この方法が主流になっていくだろう」と語っている。
Fox以外にもABCネットワークが3月中旬からスタートさせたサスペンス・ドラマ『Missing』を米国における放送開始4日前に世界31の国と地域でデビューさせるなどの動きが出ている。
ちなみに、『タッチ』は、未来を予見する不思議な能力をもつ失語症の男の子とその父親を中心にした1時間ドラマ。父親役は同ネットワークの人気アクション・ドラマだった『24』で特別捜査官役を演じたキーファー・サザランド。世界同時配信の対象になる番組には、文化の違いが障害になるコメディー番組などは後回しにされ、主にドラマ番組が採用されることになりそうだ。