米国でPay TV(ペイテレビ)と呼ばれているケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者などの加入者の離反数が増大している。Hulu(フールー)やNetflix(ネットフリックス)などといった番組のインターネット配信サービスの普及のおかげで2011年には約100万人のペイテレビ加入者がサービスを解約した模様だ。ペイテレビには電話会社が供給するIPテレビを利用した番組送信サービスも含まれるが、カナダの調査会社「Convergence Consulting Group(コンバージェンス・コンサルティング・グループ)」によれば、2008-11年までの3年間で265万人がいずれかのペイテレビから離反していることが明らかになった。米国ではこのような動きを、ペイテレビの代表格CATVをキャンセルするという意味から“コード・カッティング”と呼ばれていてペイテレビ業界が危機感を募らせている。
ちなみに、米国には約1億1470万軒のテレビ世帯があり、総視聴者数は約2億9500万人。そのうちの9割がペイテレビに加入しテレビを見ている。
ペイテレビ離反数増加の要因は年々値上がり傾向にある加入料。地域やペイテレビ社によってまちまちだが、米調査会社SNLケーガンによればベーシック・チャンネルのみで構成されるパッケージの平均加入料は約50㌦。別な調査会社Centris(セントリス)では約70ドル、ニューヨーク・タイムズ紙の調べではNFL(米プロフットボール・リーグ)などの有料チャンネルをオプションとして組み合わせれば加入料は月額100㌦にも達するという。
加入者からは、「月額料金が高すぎるうえ、見たくもないチャンネルが多すぎる」などとベーシック・パッケージに対する不満の声が増大しているのが現状だ。
一方、フールーやネットフリックスの月額料金は約8㌦。ペイテレビが提供するコンテンツ(番組)数には及ばないが、「最低限の番組は見ることができるし、何しろ月額料金がペイテレビと比較にならないほど廉価だ」と考える消費者がペイテレビから動画配信サービスに鞍替えをしているのだ。コンバージェンスでは、ペイテレビ解約数は今後も増え続け、今年は359万件に達すると予測している。
コード・カッティング現象の拡大を見据えて、ニューヨーク市ではローカルテレビ局のみを束ねてブロードバンド回線で低価格(月額12㌦)で配信するペイテレビ対抗サービスAereo(エーリオ)などが現れている。