P帯番組がDVR視聴の犠牲に

地上波テレビ、3大ネットワーク(ABCCBSNBC)のプライムタイム(午後811時)、特に木曜日10時台の視聴率低下傾向が止まらない。(4大ネットワークに含まれるFox10時台の放送をしていない)。10時台は帰宅後夕食を済ませた市民が就寝前にゆっくりテレビを見る時間ということもあって、各ネットワークが看板番組を並べる時間帯。木曜日は、週末に映画を見たり、ショッピングに出かける視聴者を狙って広告主がCMを熱心に出稿してくれる重要な曜日だ。


 

かつてプライムタイムの王者としてならしたNBCを見ても、1981年から2009年にかけて大ヒット作となった『Hill Street Blues(ヒルストリート・ブルース)』、『L.A LawLAロー/7人の弁護士)、『ER緊急救命室』などはすべて木曜夜10時台に放送された番組だ。


しかし、ERが終了した09年以降、NBCの同時間帯の番組視聴率が顕著に下降し始めた。同ネットワークの過去7ヶ月の動向も見ても、同時間枠に放送した3つのドラマ番組の視聴率は広告主が最重要視する視聴者層(1849歳)で平均1.2%とみじめなものに終わっている。

 

問題はNBCに限らない。ネットワーク全体を眺めても、今シーズン10時台にデビューした新番組11本のうち、1849歳層の視聴率2.0%の及第点がとれなかった番組が7本にも上っている。これらの番組を含め8本が今季限りの放送となってしまった。

 

同時間帯の視聴者数減少の要因だが、HDD内蔵型デジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)の普及が挙げられている。Foxネットワークの姉妹局で若者に人気のケーブル局「FX」のジョン・ランドグラフ社長は、視聴者が同時間帯をDVRに録画した番組をキャッチアップ視聴するために利用している、と見ている。

 

米調査会社「ライクマン・リサーチ・グループ」によれば、米テレビ世帯におけるDVR普及率は44%に迫る勢い。全米で5000万世帯のテレビ視聴者が「自分の見たい番組を好きな時間にみる、自らのテレビ番組表を作っているようなもの」だという。

 

一方、DVR視聴のおかげで視聴者数が底上げされる番組もあり、広告主に“隠れた視聴者”をアピールするネットワーク関係者も出てきている。

 

ところで、プライムタイム番組の敗退が続けば、ネットワークテレビ番組のヒット作の再放送を編成の重要な柱に据えてきたケーブル局にとっても、コンテンツ不足に陥る懸念材料となりそうだ。

<テレビ朝日アメリカ 北清>