CM飛ばし視聴機能内蔵のDVR登場

米衛星放送大手Dish Network(ディッシュ・ネットワーク)(加入者1400万軒)はこのほど、録画番組を視聴する際にCMの完全飛ばし視聴を可能にする機能を備えたデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)の提供を始めた。新サービスは「Auto Hop(オート・ホップ:自動飛び越し)」と名づけられた。4大テレビネットワーク(ABCCBSFoxNBC)が全国向けに放送するプライムタイム番組に限って機能の利用が可能。放送日翌日午前1時から利用ができる。

加入者は番組を見る前にリモコンを使って画面上のオート・ホップ・ボタンを押せばCM挿入箇所が一瞬暗くなるものの、CM無しの番組が視聴できるという。同サービスの利用には99㌦の前金と10㌦の月額利用料が課せられる。

 

衛星放送やケーブルテレビ(CATV)事業者が提供する従来型のDVRは、CM箇所に差し掛かった際にリモコンを使ってその都度早送りしなければならず、ディッシュ・ネットワークのCEO(最高経営責任者)ジョセフ・クレイトン氏によれば、新サービスは加入者の間で大好評だという。


ところがこのサービスに対し、テレビネットワーク関係者から一斉に批判の声が挙がっている。700億㌦ともいわれる広告費が投入されるテレビ業界にとってCMの完全飛ばし視聴が普及すれば死活問題にも関わってくるからだ。5月下旬の段階で、ABCをのぞく3大ネットワークがそろってディッシュを相手取り訴訟に踏み切った。各ネットワークは、「ディッシュには再送信の許可を与えているが、番組内容に手を加えることは認めていない。著作権侵害にもあたるもの」などと主張。NBC関係者は、「オート・ホップは、放送ビジネスのエコシステム(生態系)に対する攻撃だ」と激しく反発している。

 

これに対し、クレイトン氏は、「テレビビジネスモデルを無視するつもりは毛頭ない」と述べているものの、「このサービスはあくまで消費者の求めに応じたものだ」と強調、ひるむ様子はない。

 

テレビネットワーク各社にとって近年、衛星放送など番組送信会社から受け取るようになった送信料が重要な放送外収入源になっており両者の関係はデリケートなものになっているだけに、ディッシュが打ち出した新サービスをめぐるやり取りは今後紆余曲折がありそうだ。

 

米調査会社ニールセンによれば、米国におけるDVRの普及率は43%DVR保有者の半数がCMを飛ばして視聴しているという報告もある。

<テレビ朝日アメリカ 北清>