CNN、視聴率低下に歯止めかからず

米ニュース専門局老舗のCNNテレビが視聴率低迷に悩んでいる。5月第3週におけるプライムタイム(午後811時)の平均視聴者数は395,000人と19919月以来20年ぶりとなる最悪の数字となった。ニューヨーク・タイムズ紙は、「CNN首脳陣は過去にも低視聴率に悩まされたことがあり、今回の結果にも動揺しないかもしれないが、極めて深刻な状況だ」と警笛を鳴らしている。

 

プライムタイム番組の中で特に深刻なのが午後9時(米東部時間)から放送されている『Piers Morgan Tonight(ピアース・モーガン・トゥナイト)』。長寿番組『ラリー・キング・ライブ』に替わって20111月に始まった後継番組だ。広告主がニュース番組の視聴者の中でターゲットにしている2554歳層の平均視聴者数が39,000人と97年以来最悪の記録をつくってしまった。米ニールセン社によれば、CNN4月の月間平均世帯視聴者数も昨年同月比21%減となる357,000人。018月以来の不振ぶりで、視聴率の低迷は一時的なものではなくなっている。


不調の原因については、「CNNが従来から敷いている『ニュースが主役』とする方針が仇になっている」と指摘する声が多い。ライバルのFoxニュース・チャンネル(FNC)が保守的な主張をぶつける個性的なキャスターを前面に押し出す一方、NBCユニバーサル傘下のMSNBCはリベラル色でアピールする手法とは好対照。2社の前に存在感を失っているというのだ。また、CNNの不振は、「超党派の精神」には興味のない米視聴者の時代精神を反映しているという意見もある。

 

CNNは世界的な事件や事故が起こると視聴率が上がるとされているが、今年5月は世の中が比較的平穏だったことも同社にとって不利に働いている模様だ。ちなみに、昨年5月には国際テロ組織アルカイダの指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦の成功があり視聴率が急上昇した。ニューヨーク・タイムズ紙は、「CNNは、救急病棟のようなものかもしれない。患者は容態が落ちつけばすぐ退院していくように、視聴者はブレーキング・ニュースがなければCNNから離れていってしまう」とする某CNN従業員の声を紹介している。

 

今年の営業利益は相変わらず海外市場での番組販売が好調で6億㌦が見込まれているが、視聴率低下が続けばブランド名の価値が下がるほか、従業員のモラル低下にもつながるとあって、親会社タイムワーナーは危機感を募らせている模様だ。

 <テレビ朝日アメリカ 北清>