
「米広告主はシニア市民に目を向けよ」。 こんなスローガンのもと、若者層(18-34歳)を黄金の卵としてターゲットとして固執しているとされる米広告主に再考を求める動きが出ている。「シニア市民の購買力を侮るな」といわんばかりのメッセージを発しているのは、50歳以上のシニア市民の生活を側面援助するNPO団体、全米退職者協会(AARP)。全米最多の発行部数を誇る同団体が発行している雑誌『AARP The Magazine』(写真)などに掲載されている広告が偏っていることへの不満をぶつけたものだ。ちなみに、同雑誌は隔月発行。発行部数は2240万部にも及んでいる。
同団体によれば、「50歳以上の熟年層は、身体・肉体的にも活発で、貪欲な購入者。それに対し18-34歳層はほとんどお金を持たない層で、購買力があるとは思えない。そんな層を対象になぜ多額の広告費を投入するのか。出稿先を考え直すべきだ」と呼びかけている。
AARPは、「20-30歳の若者層を狙った広告方法は、全米に7000万人いるとされるベビーブーマーと呼ばれる団塊の世代が30歳半ばだった1975-85年の戦略。もはや時代遅れの広告手法だ」と、手厳しい。
また、AARPによれば、55歳以上の労働人口は全体の20.6%を占めているが、同層向けの広告費は15.8%に留まっている。一方、20-34歳層は米労働人口の31.1%に留まっているにもかかわらず、同層をターゲットにした広告費は全体の40.3%を占めている、と指摘している。
さらに、同団体が発行する雑誌をはじめウェブサイト、さらにはラジオ番組などに出稿される広告内容を見ると、補聴器や血糖値測定器、さらには薬品関連などシニア向けの宣伝が主流。AARPによれば、新車購入者の62%が50歳以上の熟年層で占められているにもかかわらず、自動車メーカーによる広告は、トヨタとジープを除きほとんど皆無な状態だという。AARPマーケティング部門責任者パトリシア・デイビス氏によれば、「熟年層が十分なサービスを受けていない状況」。「お金を持っている層にお金を投入すべきではないか」と、広告主に再考を呼びかけている。
ちなみに、米雑誌メディア協会(Association of Magazine Media)によれば、『AARP The Magazine』の2011年における広告売上高は前年比24.5%増となる1億6330万㌦。
AARPの会員数は3700万人だが、そのうち50-59歳が33%を占め、60-74歳が46%、75歳以上は21%となっている。全会員の47%が退職者だという。