米CATV、軸足はブロードバンドに

米国で今夏、テレビ番組などの再送信サービスに当たるペイテレビ・サービスの中で、ケーブルテレビ(CATV)事業者の株価が堅調に推移している。同事業が、100%国内産業であること、景気低迷が続く米経済の影響を受けにくいこと、「コードカッティング」(CATV解約)現象が懸念されたほど加速していないこと、などを好感し投資家が“CATV株買い”の動きに出ているからだ。

 

ただ、CATV事業の行方に問題がないわけではない。中核サービスであるテレビ番組などの映像配信が、テレビ局やケーブル局などの配信料値上げ要求の連続で利益幅が圧縮されていて、大きな懸念材料となっている。米調査会社SNLケーガンの調べでは、ライセンス料とも呼ばれているCATVがケーブル局などに払う配信料は年率7%の値上がりを見せており、201246月期における1軒当たりの加入料収入の3倍の早さになっている模様だ。


加えて、別な調査会社ライクマン・リサーチ・グループによれば、CATV大手9社が201246月期に失った映像配信サービス加入世帯数は54万軒に達したことを報じている。前年同期に失った加入者数60万軒に比べ改善されてはいるが、275000軒の新規加入者を獲得した電話会社が提供するIPテレビサービスに押され気味なのは明らかだ。

 

一方、衰退気味の映像配信にくらべ、業界アナリストがCATVの希望の星として注目するのがブロードバンド(高速大容量)通信サービスだ。CATV最大手のコムキャストの201246月期の売上を見ると、ブロードバンド部門が全体の24%を占めるまでにいたっており、前年同期の23%からわずかながらも増えている。米金融大手バンクオブアメリカ・メリルリンチの著名アナリスト、ジェシカ・オーエン氏によれば、1246月期に獲得したCATVブロードバンドの加入者数は前年同期比118%に達したという。

 

それに対し、映像配信部門の売上高は同51%と前年同期の53%から落ち込んでおり、SNLケーガン社は、「映像配信がCATVの中核事業としての位置づけが難しくなってきた。CATVの看板をブロードバンド事業者へ塗り替えるべきではないか」と分析している。

 

インターネット需要は増大する一方。長期的には「電話会社などが提供する無線ブロードバンドにつぶされる」脅威もあるが、いまのところ無線ブロードバンドの供給量はCATVブロードバンドに追いつけないのが現状だ。

<テレビ朝日アメリカ 北清>