米エミー賞、「ホームランド」に初栄冠

米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞の授賞式が924日ロサンゼルスで開催された。注目のドラマ(シリーズ)部門の最優秀賞には有料チャンネル「ショータイム」で昨年10月デビューしたばかりの『Homeland(ホームランド)』が選ばれ事前の予想を覆す“サプライズ・ウィナー”となった。同番組はアフガニスタンで行方不明兵になった米海兵隊員が帰国後スパイ容疑にかけられるというサスペンス・ドラマ。主演男優賞と主演女優賞はホームランドに出演したダミアン・ルイスさんとクレア・デインズさんが獲得した。


 

同部門には昨年まで4年連続で最優秀賞を獲得していた映画・ドラマ専門局AMCのヒット番組で、60年代のニューヨーク広告業界で奔放に振舞う男女などを描いた『Mad Men(マッドメン)』が受賞するとの下馬評が高かったが、史上初となる5回目の受賞はかなわなかった。


今回の授賞式を受けて、「かつてエミー賞といえば地上波テレビネットワーク番組の祭典だったが、いまやす少なくともドラマ部門ではケーブル局が完全に制覇したともいえるほどの勢いだ」(ウォールストリート・ジャーナル紙)などと、ケーブル局の隆盛を指摘する声が少なくない。受賞数トップ10を見ると、6社がケーブル局と大半を占めているほか、ドラマ部門を見ても、ノミネートされた6本の番組中5本がケーブル局のものだった。

 

一方、ドラマ部門と並び主力賞に位置づけられているコメディー番組(シリーズ)部門ではABCネットワークの『Modern Family (モダン・ファミリー)』が3年連続で最優秀賞に選ばれ、辛うじて地上波ネットワークの面目を保った形だ。同番組は、ベトナム人の養子を迎えた同性愛カップルやコロンビア人の妻を得た白人亭主など米現代社会の多様性をコミカルに描いたもの。いまやABCの看板番組にのし上がっている。

 

なお、同授賞式の模様はABCが全国向けにプライムタイムで中継したが、ニールセン社の速報によれば、平均世帯視聴者数は昨年比6%増となる1320万人を獲得した。しかし、視聴者数の増加は50歳以上が中心で、広告主が重要視する若者層(1849歳)の視聴率は逆に昨年比10%減少となる3.8%に留まった。昨年のエミー賞は若者視聴者に人気のあるFoxネットワークが担当しており、今年は50歳代以上の視聴者が多いABCが中継したため、ネットワーク・カラーが影響したとの見方も出ている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>