ハリケーン報道に総力戦

米東海岸を直撃した大型ハリケーン「サンディ」が米メディア界にも様々な影響を及ぼした。全米最大のテレビ市場を抱え、深刻な被災地ともなったニューヨークのローカル局は数日にわたり特別番組を組みハリケーンの被害状況を総力を挙げて放送した。取材対象があまりにも広範に渡ったため、レポーターやカメラの数が不足、CBSネットワークの直営局WCBSテレビなどは、ミネソタ州やテキサス州の姉妹局に応援を要請したという。また、各局とも視聴者が高機能携帯電話(スマートフォン)などで撮影した被災地の映像を積極的に取り込む姿勢が目立った。

 

そして、ローカル局が特別番組を長時間に渡って放送したため、ネットワークが配信したプライムタイム番組などの放送断念を余儀なくされる事態が続いた。ネットワーク・テレビも新番組を再放送番組に差し替えたり、既存の番組を急遽ハリケーン特集に変更するなどの対応策を講じた。

 

一方、番組スポンサーの多くから「悲劇を伝える番組にはふさわしくない」などとCM出稿を見合わせる社が続出、米調査会社ピボタル・リサーチ・グループではローカルテレビ局やラジオ局が被った損害額は5億㌦に達したとみている。同社では、これらのメディア会社に対する1012月期における広告支出額を前年同期比0.9%増から1.4%減に下方修正した。


ところで、ハリケーン報道ではローカル局はもとより、ニュース専門局が軒並み高視聴率を獲得した。中でも天気専門局「ウェザー・チャンネル」ではサンディが米東海岸に上陸した日に、広告主が重要視する2554歳層の視聴者数が80万人に達し開局以来の記録となった。今年8月にメキシコ湾岸地域を襲ったハリケーン「アイザック」時の46万人強を大きく上回った。

 

また、ニュース専門局では昨今最下位に甘んじているCNNがプライムタイムで同2554歳層視聴者数109万人を獲得、Foxニュース・チャンネル(同875000人)、MSNBC477000人)を押さえトップにたった。ただ、総世帯視聴者数ではFoxに及ばなかった。

 

今回は停電でテレビが見られなくなった世帯も多く、各テレビ局がインターネット上にハリケーン情報を積極的に提供した。大きなニーズがあった模様で、フィラデルフィアのABC系列局WPVIテレビのホームページのページビュー数はハリケーンが上陸した日には1310万件、ニューヨークのWABCテレビは900万件を記録したという。

<テレビ朝日アメリカ 北清>