クロス・オーナーシップ規制を大幅緩和か

米放送、通信、電波の監督機関であるFCC(連邦通信委員会)がメディア所有規制の緩和策を検討している。FCC広報がこのほど発表したステートメントによれば、1メディア企業が同一区域で地上波テレビ局と新聞社を所有する“クロス・オーナーシップ”を制限する現行規定を一部廃止することも含め、簡素化と近代化を図る模様だ。


FCCのジェナコウスキー会長(写真・左)がすでに委員全員(4人)に原案を提示済みで、承認間近との見方があるが、連邦議会の一部から批判の声も出ており、12月中に採択に踏み切れるかどうか、紆余曲折がありそうだ。

 

実は同規制緩和は過去にも何度か試みられている。直近では2007年にFCCがクロス・オーナーシップ緩和策を施行したが、11年になって米連邦控訴裁判所が無効としてFCCに差し戻す決定をしている。制定に際し、FCCが消費者に適切な説明を怠ったほか、十分なヒアリングを実施するなど市民の意見を組み入れていない、などというのが理由だった。


クロス・オーナーシップ規定の緩和や撤廃の動きについては、「コミュニティーには報道の多様性が必要。大手メディア企業の支配につながる規制緩和は市民の利益に反する」などと主張する市民団体などから反対意見が出ている。


一方、ニュースをインターネットから入手する市民が急増中。廃刊に追い込まれる新聞が続出している現状を踏まえ、規制緩和派からは、「クロス・オーナーシップを認めればテレビ局が新聞社を救える可能性も出てくる」「取材体制などを共用し合理化を図れる」などの意見が出ている。メディア企業の中からは、「緩和ではなく、完全撤廃に踏み切るべきだ」の声も挙がっている。


今回提案される新案の中身については公表されていないが、ニューヨークタイムズ紙などによれば、「新聞・テレビのクロス・オーナーシップが認められるメディアは全米上位20市場にある社」「ラジオ・テレビのクロス・オーナーシップ規制は撤廃」「ラジオ・新聞の同規制は撤廃」などが盛り込まれているという。


ただし、「 域内の上位4テレビ事業者による新聞あるいはラジオの所有は禁ずる」「クロス・オーナーシップが実施された後も、一区域内に少なくとも8社のメディア企業が存続すること」などの条件が付くようだ。20位以下のテレビ市場では引き続きメディア所有規制が有効となる。

<テレビ朝日アメリカ 北清>