ニューズ社、YESに大型出資

世界のメディア王の異名をとるルパート・マードック氏率いる巨大メディア企業ニューズ・コーポレーションが、「YESネットワーク」へ大型出資することになった。YESネットワークは、大リーグ球団ニューヨーク・ヤンキースの親会社であるヤンキース・グローバル・エンタープライズが運営する地域向けスポーツ専門チャンネル。企業価値は30億㌦とされている。ニューズ社が取得する持株は49%。年内に手続きを完了したいとしている。

 

ニューズ社は、傘下に19の地域向けスポーツ局を所有しているが、地域向けスポーツ・チャンネルの中でも最も価値のある専門局に位置づけられているYESネットワークをテコに、スポーツ専門局界での覇権を狙っている模様だ。マードック氏はかねてから、全国向けスポーツ専門局として圧倒的な存在感と力を持っているウォルト・ディズニー傘下ESPNのニューズ社版の構築に意欲的で、YESへの大型出資もその布石と見られている。同社では2013年中に全国向けスポーツ専門局を立ち上げる計画だ。

 

全米最大のテレビ市場であるニューヨークに拠点を置くYESネットワークは、ヤンキース・グローバル・エンタープライズや金融大手ゴールドマン・サックスなどが共同出資。ヤンキース戦のニューヨーク地区内独占放送を中心に、NBA(米プロバスケットボール協会)チームであるブルックリン・ネッツの試合、さらにはヤンキースの過去の名勝負などを放送している。


熱心なヤンキースファンを中心に人気絶大のスポーツ局で、視聴可能世帯数は約1500万軒。同局の配信を希望するCATV(ケーブルテレビ)や衛星放送事業者などペイテレビ・サービスから一世帯あたり月額3㌦という極めて高額な送信料を徴収している(米調査会社SNLケーガン)。 

ニューズ社は、3年後に出資比率を80%に引き上げるオプションも獲得した模様。将来的には完全買収を狙っているとする観測も出ている。

 

ところで、今回の大型出資については、「意気軒昂なマードック氏が帰ってきた!」などとする見方が広がっている。傘下の英大衆紙で起こった電話盗聴事件などで一時は意気消沈していたとされるマードック氏だが、同社を放送部門を中心とした企業と新聞や教育部門を抱える企業2社に分割する決定が投資家などから高い支持を受けていることなどから、今後、メディア企業の買収などを狙った“マードック攻勢”が復活しそうな気配だ。

<テレビ朝日アメリカ 北清>