ペイテレビ事業、電話会社が躍進

米国でCATV(ケーブルテレビ)事業者が提供する映像配信サービス加入者数が減っている。米調査会社SNLケーガンによると、CATV1279月期におけるペイテレビ・サービス(全米トップ25市場)内のシェアは57%と、09年の64%から大きく後退していることが明らかになった(右表)。米国ではCATVに加え、衛星放送事業者(DBS)、さらには電話会社(Telco)が提供するIPテレビなど再送信サービスを通してテレビを見ている人がテレビ世帯全体の9割に達しているが、市場は飽和状態に達していて各事業者がパイを奪い合っているのが現状だ。

 

そのペイテレビ市場、かつて圧倒的なシェアを誇っていたCATVに代わって電話会社の台頭が鮮明になっている。映像配信サービスに電話とブロードバンド(高速大容量)通信を束ねた“バンドル(一括)サービス”の積極的な売り込みとアフターケアの評判などが消費者の好印象を誘っている模様で、電話会社のシェアは同期13%と、09年同期の7%からほぼ倍層している。衛星放送のシェアは30%09年(29%)とほぼ横ばい。顧客がCATVから電話会社のIPテレビ・サービスへ流れていることは明らかだ。

 

ところで、ベライゾンとAT&Tという2大通信会社が提供するIPテレビのシェア拡大は10大都市に集中しているのが特徴だ。ヒューストンでは過去3年間に219%の加入者数が増加したほか、アトランタ(181%)、シカゴ(133%)、首都ワシントン(123%)、ロサンゼルス(100%)、ニューヨーク(41%)などといった具合だ。


ちなみに、ペイテレビ・サービス全体の加入者は2011年末時点で9455万軒超。映像配信だけで1020億㌦規模いわれるペイテレビ事業者が直面する課題は市場の飽和状態に加え若者層で顕著となっている離反問題。例年値上がりする加入料を嫌った動きだが、ペイテレビ事業者の代表格CATVを解約するという意味から“コード・カッティング”という言葉が業界用語になっているほどだ。

 

若者の間では、インターネット経由で番組をオンデマンド配信するNetflix(ネットフリックス)やHulu(フールー)などに鞍替えする動きが加速していて、コード・カッティングが加速して行く可能性も指摘されている。これらのサービスは、番組のリアルタイム視聴は出来ないが月額8㌦という手軽な料金が魅力だ。

 

米調査会社NPGグループによれば、全国の月額平均加入料は11年の時点で86㌦。20年までに196㌦ほどまでに高騰すると見ている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>