中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」がこのほど米ニュース専門局「カレントTV」の買収を発表したが、米国内で様々な反響を呼んでいる。アルジャジーラはカタール政府の全面支援を受けて96年に設立された、主に中東諸国向けのニュース専門。カレントTVはゴア米元副大統領が05年に共同出資して設立した若者向けニュース局だ。
アルジャジーラは新たにニューヨークに本部を置き「アルジャジーラ・アメリカ」を13年中に立ち上げる予定。視聴可能世帯6000万軒といわれるカレントTVのプラットフォームを利用し英語放送を展開、米国に本格的に進出したい考えだ。ちなみに、アルジャジーラは米国内ですでに英語放送をしているが、サービスは首都ワシントンとニューヨークなどに限定されており、全国的にはほとんど認知されていない。
買収発表を受けて、「CNNをはじめ、Foxニュース・チャンネルやMSNBCなど24時間 ニュース専門局が乱立気味。新しいニュース局へのニーズはないのではないか」などと業界内には新局の設立に首を傾げる向きがある。専門家の間でも、「テレビ番組などの輸出には慣れている米市民が、中東色の強いニュース専門局を(海外から)受け入れることは難しい」などと悲観的な見方が少なくない。
一方、ニューヨーク・タイムズ紙は買収が発表されるや社説で取り上げ、「報道の中立性が守られないとの懐疑的な意見があるが、米市民に(米報道機関では伝わりにくい)客観的な海外ニュースを提供してくれる可能性がある」と期待感をにじませている。特に10年から11年にかけて中東諸国で起きた民主化要求運動「アラブの春」の“比類のない報道ぶり”を高く評価している。
ところで、買収が発表されるや間髪をいれずに米ケーブルテレビ(CATV)大手タイムワーナー・ケーブル(TWC)がカレントTVの配信を取りやめる決定を発表した。これに対しても、「偏った報道機関になる可能性があるからといってスター前からアルジャジーラ・アメリカを締め出すべきではない。チャンスを与え、同局の正当性については米視聴者の審判に委ねるべきではないか」(NYタイムズ紙)などと、TWCに再考を呼びかけている。
TWC側は、「視聴率が低迷している小規模ケーブル局配信の見直しを進めており、カレントTVの配信取りやめもその一環、アルジャジーラが買収したこととは関係ない」とするコメントを発表している。