ニューズ社がスポーツ専門局開設へ

米メディア企業大手ニューズ・コーポレーションは今年817日を目標にスポーツ専門局「Fox Sports 1」を立ち上げることを発表した。ライバル社ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門局ESPNの押しも押されぬ成功ぶりに触発された動きであることは間違いないが、スポーツ専門局の創設が長年の夢だったとされる同社会長ルパート・マードック氏(写真・下)の執念が実ったともいえそうだ。

 

現在、自動車レースなど、オートスポーツを中心に放送している傘下のケーブル局「Speed」を新装、大学フットボール戦、大リーグ試合、サッカー、さらには格闘技などに加え、スポーツニュースやスタジオ番組などを絡めた編成にしていく方針だ。同社によれば、スタート時の視聴可能世帯数は9000万軒と恵まれた船出となる。

 

しかし、Sports1の前には様々な難題が立ちはだかりそうだ。まず、スポーツ専門局が乱立気味なこと。大手NBCユニバーサルがNBCスポーツ・ネットワークを、CBSコーポレーションがCBSスポーツ・ネットワークとそれぞれスポーツ専門局をスタートさせているが、ファンの心を掴み切れずにいる。そして、本来なら各スポーツ局が放送したい人気スポーツ・リーグがそれぞれ独自の専門局を立ち上げる傾向にあり、視聴者争奪戦が一層激しくなることも予想される。それでもニューズ社のCOO(最高執行責任者)チェイス・ケリー氏は、「スポーツの世界は大きな世界。魅力ある局ならばまだまだ付け入るチャンスはある」と自信ありげだ。しかし、新局事業の成算については、「成功するまでには最低5年間はかかる」と述べ、多大な期待感を打ち消している。


米テレビ界ではDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)の普及やインターネット上の番組配信サービスの隆盛でプライムタイム番組などをいったん録画して視聴する生活者が増えており、広告主や放送事業者の頭痛の種になっている。そんな中、スポーツ番組はリアルタイムで視聴してくれる数少ない番組の一つであるとともに若者視聴者を引き付けることができるとあって、同番組が圧倒的な魅力になっているのが現状だ。

 

ちなみに、王者ESPNはケーブルテレビ(CATV)や衛星放送事業者など、いわゆるペイテレビ・サービス各社に一世帯当たり515㌣の配信料を課している模様。配信料だけで年間60億㌦の収入を獲得している。Foxでは同配信料を75㌣から1㌦を当面の目標にしているという。

<テレビ朝日アメリカ 北清>