2012年に実施された米大統領と連邦議会選挙戦などが米ローカル局に記録的な広告収入をもたらしたことが明らかになった。米テレビ広告局(TVB)の調べでは、全米のローカル局に投入された選挙広告費は29億㌦に達し新記録を樹立。米有力調査会社SNLケーガン社が予想していた26億㌦を軽く上回ったばかりか、10年に実施された前回の総選挙(中間選挙)に比べ38.4%増、前回の大統領選挙08年に比べなんと85.5%も超える支出額となった。
大統領選が接戦だったことが大きいが、予備選を終え、共和党(8月下旬)、民主党(9月初旬)両党大会後一挙にCM数が増え、選挙戦終盤となった10月だけで全体の44%に相当する12億7000万㌦が費やされたという。スイング・ステートと呼ばれる浮動票を多く抱えた9州には大統領選挙CMの9割が投入された。
その選挙CM、相手の候補を誹謗中傷するものが多く、視聴者の中からは「うんざりした」などという声も上あがったが、SNLケーガン社によれば、300万本以上の選挙CMがブラウン管を通してお茶の間に飛び込んだ。
一方、大統領選挙の制作にあたっては両陣営とも、ニールセン社や米調査会社が提供したテレビ視聴習慣のデータを綿密に分析したものをフル活用した。狙った有権者が多く住む特定の地域や、これらの有権者がテレビをよく見る時間などに合わせて内容を作り直したキャンペーンCMを出稿した。
ところで、大統領選挙と同時に連邦上下両院の選挙と州の知事選、ならびに住民投票なども合わせて実施されたが、CM支出の内訳をみると、大統領選挙向けが一番多く8億9500万㌦。次に多かったのが住民投票にかかわるもので6億2950万㌦。これに上院議員選の6億2590万㌦、下院議員選の4億5390万㌦、知事選1億18000万㌦などと続いた。
ちなみに、記録的な選挙CM出稿とは裏腹に選挙当日夜の開票特別番組の視聴率は08年から減少してしまった。地上波テレビ局とケーブル局合計13社の合計をみると、08年の世帯視聴率が24.5%、視聴者数7147万4000人だったのに対し、12年の世帯視聴率は23%、視聴者数6684万人だった。13社中、唯一視聴者数が増加したのが保守的報道で知られるニュース専門局Foxニュース・チャンネル。同社25-54歳層の視聴者数は1145万3464人と、08年の904万4000人を上回った。オバマ大統領の再選阻止を狙った共和党ロムニー候補を重点的に伝えた同局にチャンネルを合わせた人が多かった模様。