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4月8日から米ラスベガスで開催された米放送事業者協会(NAB)主催の放送機器展示会「NAB2013」の基調演説に臨んだあるメディア企業幹部による爆弾発言が話題を独占している。
その幹部とはFoxネットワークやウォールストリート・ジャーナル紙などを傘下に置くニューズ・コーポレーションの最高執行責任者(COO)チェイス・ケリー氏。地上波テレビFoxネットワークをケーブル局に移行させる可能性を示唆したからだ。そして同氏の発言を促した元凶は、インターネットを使ったテレビ番組配信サービスAereo(エーリオ)。米国でペイテレビと総称される、番組再送信サービスを提供するCATV(ケーブルテレビ)や衛星放送などに対抗する新サービスで、12年3月にニューヨーク地域を対象に事業を始めている。
米国では約9割の人が何等かのペイテレビに加入してテレビを見ているが、値上がりを続けるばかりの加入料に不満を募らせているが現状だ。そんなペイテレビ加入者を引き抜こうと登場したのがエーリオ。ケーブル局は見られないが、地上波テレビ局なら月額12㌦という安価で、パソコンをはじめスマートフォンやタブレット型情報端末をテレビがわりにペイテレビ加入者と同様テレビ放送を見られるというものだ。また、同社が提供するネット上のDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)機能も利用できる。
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問題はエーリオが放送事業者などから再送信許可を一切受けていないこと。放送事業者サイドは著作権侵害に当たるとして連邦地裁などに指し止め訴訟を起こしたが、却下されてしまった。ケリー氏の発言は「裁判所に対する不満をあてつけたもの」などと捉えられているが、他ネットワーク首脳陣もチェイス氏を支持、「エーリオが違法行為を止めないのなら、電波を止めることも辞さない」などと強硬論も出ている。
チェイス氏発言の裏には、放送事業者にとって大事なペイテレビ事業者を(エーリオから)守ろうとする意図も見え隠れする。放送事業者はペイテレビ各社から配信料を徴収しているが、年々値上げを確保、大事な放送外収入になりつつあるからだ。
ちなみに、エーリオは、「我々は市民に無料で提供されている放送電波を加入者にかわって受信・配信しているだけ」と、連邦地裁の判決を歓迎。今年中にはニューヨーク以外の21の地域にサービスを拡大したいとしている。ネットワークサイドは上訴する構え。