米ケーブル局の中で圧倒的な存在感を示している24時間ニュース専門局の勢いが頭打ちになっている。米ニュース・チャンネルは保守的な報道を看板にしているFoxニュース・チャンネル(FNC)、中道派といわれるCNN、それにリベラル色をアピールするMSNBCの3大局に代表される。2012年は視聴率稼ぎに絶交のチャンスだった大統領選挙があったが、いずれも視聴率が低迷気味。それにつれて広告収入などが王者FNCと後発のMSNBCで微増、老舗のCNNは横ばいと芳しくない成績に終わった。
米有力調査会社ピュー・リサーチ・センター傘下の非営利団体で、米報道機関の分析や調査などにあたる「Project for Excellence in Journalism(優れたジャーナリズムのためのプロジェクト)」(以下、PEJ)がこのほど発表した年間報告書「The State of the News Media 2013」によれば、12年における3社を合わせたプライムタイム(午後8-11時)の視聴者数は前年に比べわずか3%増。「視聴者がニュース局に背を向けて始めている」と分析している。
3社を個別に見ると、相変わらずFNCの独走状態が続いている。同社の視聴率とキャッシュフローはCNNとMSNBCを合わせたものを超えるほどだ。一方、不振が目立つのがCNN。ニールセンによれば12年同社の全日平均視聴者数は32万1000人と、11年の37万9500人から大きく落ち込んだ。米調査会社SNLケーガンによれば、同社12年のキャッシュフローは前年比5%の減少となる見込み。11%増となるFNC、4%増となるMSNBCとは対照的だ。SNLケーガンは、ニュース専門局大手が振るわないのは、実はCNNとその姉妹局HLNの不調によるところが大きく、FNCとMSNBCが衰退しているわけではない、と指摘している。
SNLケーガンのアナリスト、デレック・ベイン氏は、CNNの視聴者離れについて、「かつては事件・事故を受けて生中継番組をふんだんに取り入れていたが、近年は制作費が削減できるインタービュー番組を多用するようになった。ファンがCNNに見切りをつけ始めているでのはないか」と分析している。
CNNは今年3月、米メディア企業大手NBCユニバーサルの前CEO(最高経営責任者)ジェフリー・ザッカー氏をCNNワールドワイドの責任者に迎え立て直しを図っている。ザッカー氏は、地上波テレビABCネットワークなどから次々にキャスターをスカウト、新たな番組をスタートさせCNN蘇生作業に取り組んでいるが、PEJ報告書はCNN復活はザッカー氏にとって「困難な仕事」になるだろうと悲観的だ。