アップフロント売上が低調

9月から始まる米テレビシーズン中のプライムタイム(午後811時)で放送される番組編成のお披露目とCM予約販売交渉が行われる「アップフロント」が完了した。地上波テレビネットワークが対象になるアップフロントは例年5月から始まり1か月ほどで完了するが、今年は8月初頭にまでずれ込む“難産”だった。ちなみに、昨年のアップフロントは全社の交渉が完結するまでにかかった時間はたったの2週間だった。

 

広告専門誌「アドバタイジング・エイジ」は、4大ネットワーク(ABCCBSFoxNBC)に若者向けのミニ・ネットワークCWを加えた5社の総売上高が、昨年度とほぼ横ばいとなる8893億㌦に留まったと見ている。社によってばらつきがあるが、プライムタイムCM枠の7080%が取引された。

今年のアップフロントを総括すれば、“活気のない”交渉だったといえそうだ。CM料金の値上げを求めたネットワークテレビに対し、視聴率が低調だった昨シーズンの記憶が新しい広告主が難色を示し、交渉が難航したためだ。業界アナリストは一様に今年のアップフロントが買い手市場だったことを指摘している。

 

基本的には広告主の財布のひもが固くなっていることに加え、広告費をネットワークテレビからケーブル局やインターネットにシフトするスポンサーが増えていて、ネットワークテレビ向け広告費が削減されているようだ。大広告主である自動車業界や映画会社の広告予算が減少傾向にあることも影響しているという。

アップフロント売上をネットワーク別でみると、昨シーズン視聴率2冠王を取得したCBSが昨年度とほぼ横ばいながらも推定約27億㌦でトップ。ソフトな広告市場を見極め、交渉の早期完結を優先させた。これに最後まで粘ったABCが結局広告主を説得できず昨年度を下回る約235000万㌦で続いた。

 

NBCは『The Blacklist』や『The Michael J. Fox Show』などの新番組が広告主の関心を誘い、昨年度を上回る約21億㌦。ちなみに、昨年度の売上を上回ったのは唯一NBCのみ。そして、看板番組『アメリカンン・アイドル』(オーディション番組)の不振がたたり広告主がターゲットにしている1849歳層の視聴率が前シーズン比20%以上も落ち込んだFoxの売上高は4大ネットワーク中最低となる175000万㌦規模に終わった模様。

 

ミニネットワークCWもターゲット層の視聴者数が前年度比10%落ち込んだことがたたり、売上は約41000万㌦に留まったようだ。

<テレビ朝日アメリカ 北清>