エミー賞に『ブレーキング・バッド』

米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞の発表と受賞式が22日、ロサンゼルスで開催された。注目の連続ドラマ部門最優秀賞には、前評判の高かったケーブルテレビ局AMCの『ブレイキング・バッド』が選ばれた。同番組は、がんで余命わずかと宣言された高校の化学教師が、家族に財産を残すために麻薬密造に手を染めていく様子を描いたもの。過去4年続けて同部門にノミネートされていたが今回ようやく念願が叶った。

 

 

一方、コメディー番組シリーズの最優秀賞は地上波テレビABCネットワークが放送する『モダン・ファミリー』が4年連続で栄冠を手にした。同番組は、同性カップルやヒスパニック系家族など多様化が進む米社会を浮き彫りにしている。

両番組はさておき、今回のエミー賞で大きなスポットライトを浴びたのが政界スキャンダルを扱ったサスペンス・ドラマ『ハウス・オブ・カード』だったといえる。同番組はインターネット上の動画配信サービス「Netflix(ネットフリック)」が1億㌦の高額制作予算(2シーズン分)を投入し、デビューさせたもので、ネット配信番組としては初めて連続ドラマ部門を含む3部門の最優秀賞候補にノミネートされた。主役にハリウッド映画俳優ケヴィン・スペイシーが採用されたほか、監督には映画『ドラゴン・タトゥーの女』など数々のヒット作を出がけたディビッド・フィンチ氏が起用され、しかも1シリーズ13話を一挙に公開するという異例の手法をとり業界をあっと言わせた。

 

惜しくもドラマ部門の受賞は逃したが、デイビット・フィンチャー氏が監督賞を獲得、主要な賞を獲得した初めてのネット配信番組となった。今後ハリウッドのネットフリックスを見る目がかわるのは必至。同社のオリジナル番組に参加するハリウッド俳優は脚本家などが増えていくと見られる。

 

エミー賞は、かつて地上波テレビネットワークと大型ドラマ番組を提供する有料チャンネルHBOの独擅場だったが、08年に広告支援型のケーブル局AMCの番組『マッド・メン』(60年代の米広告業界がテーマ)がドラマ部門最優秀賞を獲得して以来、地上波ネットワーク番組が押され気味。今回ハウス・オブ・カードが存在感をアピールしたことでエミー賞がさらに変貌することになりそうだ。

 

なお、同授賞式の模様はCBSネットワークが全国向けに生中継したが、視聴者数1763万人を獲得06年以来の好記録となった。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>