モバイル広告に熱い視線

モバイル・ディバイスと呼ばれる高機能携帯電話(スマホ)やタブレット型情報端末人気が急上昇中の米国でモバイル・ディバイス利用者をターゲットにした広告出稿に火がついている。インターネット広告の米業界団体IABInteractive Advertising Bureau)によれば、今年上半期におけるモバイル広告売上高は30億㌦と昨年同期の12億㌦を倍以上超える急伸ぶりを見せた。インターネット広告全体の15%を占めるまでに至っている。

広告業界誌アドバタイジン・エイジは今年のテレビ広告が700億㌦に達すると見ており、これに比べればまだ微々たるものだが、注目されるのがその伸び率だ。今年のテレビ広告売上高は昨年比2.8%増に留まるのに対し、モバイル広告は前年同期比145%増(米調査会社イーマーケッター)と急拡大が見込まれている。

米広告主はこれまでモバイル広告出稿に消極的な向きが多かった。テレビ放送の視聴率に相当する包括的な測定値などがなく、モバイル利用状況が不明瞭だったことなどが主な理由だ。しかし、米消費者のモバイル利用が急上昇中であることを受け、そんな懸念が急速に薄らいでいる模様だ。

世界的な家庭用品メーカー、ユニリバーの北米地域メディア担当者はウォールストリート・ジャーナル紙に、「消費者によるモバイル・ディバイスの利用時間がこれほどまでに増えてくれば、広告出稿を考えるのは必然的な流れだ」と述べている。同社では今年のモバイル向け広告出稿量を昨年の3倍に増やす予定だ。

米調査会社ピュー・リサーチ・センターの調べでは、今年6月現在、米成人の56%がスマホを、34%がタブレットを保有しているが、別の調査会社フランク・マギッド・アソシエイツが対象を1264歳層に広げた場合、保有しているか否にかかわらず「スマホを利用している」と答えた人が74%、タブレットでは52%にも上ることが判明した。こうした利用者は今後も拡大の一歩をたどる模様で、同社では、来年はスマホの利用者が80%に、タブレットは64%に増大するという。

米テレビ事業者の間では、、モバイル利用増大が与えるテレビ視聴への影響を懸念する声もあるが、フランク・マギッド社では、モバイル利用者の間で「ながら族」が多いことに注目、米消費者のテレビ視聴時間に大きな変化は出ないと結論付けている。同社のデータではスマホ利用者の37%が、タブレット利用者の56%が「モバイルはテレビを見ながら使っている」と答えている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>