米連邦控訴裁がネットの中立性を否定

米首都ワシントンの連邦控訴裁判所はこのほど、米連邦通信委員会(FCC)が「ネットの中立性」を保つために2010年に定めた規則「Open Internet Rules(オープン・インターネット・ルール)」について、FCCの権限を逸脱しているとの判断を下した。提訴した米通信大手ベライゾンの主張の一部を認めたもので、FCC自身が情報サービスとして定めているインターネットを同ルールは通信サービスとして見なしているとの見解だ。

FCCは、自由で開かれたインターネット利用促進を目的にオバマ大統領の肝入りで同規則を制定、通信会社やケーブルテレビ(CATV)事業者などが提供するインターネット・サービス(ブロードバンド通信)が、特定のコンテンツやサービスを遮断したり差別することを禁じている。FCCは、開かれたインターネットは、経済の活性化にもつながるとしている。

 

しかし、米通信大手ベライゾンなどブロードバンド・サービス事業者は、テレビ番組や映画など大容量のコンテンツを課金制で配信し大成功を収めているNetflix(ネットフリックス)などを挙げ、「ネットにただ乗りしている企業には相当の使用料を課すべきだ」などと主張している。ちなみに、ネットフリックスの会員によるネット利用が北米ネット交通の32%を占める“渋滞の元凶”になっているという指摘もある。

ところで、今回の控訴裁の判定に対し、米国内の保守派とリベラル派が正反対の意見を展開、ちょっとしたイデオロギー論争が巻き起こっている。保守派代表ウォールストリート・ジャーナル紙が社説で「(ネット・サービスが政府の意向に左右されれば)米国内におけるブロードバンドの普及を遅らせるばかりか、様々な新興企業によるイノベーションを妨げることになる」などと控訴裁の判断を支持する主張を展開すれば、リベラル派ニューヨークタイムスも社説で、「(ネットの中立性が保たれないならば)インターネット・プロバイダーがネット上のサービスを制限したり様々な料金を課すことも可能になり消費者が甚大な被害を被ることになる」などと落胆ぶりを隠せない。

今回の裁判所の判決によりインターネットを利用する消費者に直ちに影響が出ることを予想する向きは少ないが、例えばネットフリックス加入者には特別使用料が課せられるなど、中長期的にはネット利用者が使用量に応じた料金を払わざるを得ない局面が訪れるだろうとの見方が出ている。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>