ネットフリックス、回線利用料直払い

テレビ番組や映画のインターネット配信サービス最大手Netflix(ネットフリックス)はこのほど、ケーブルテレビ(CATV)最大手コムキャストに対し、ブロードバンド通信利用料を直払することで合意した。米国では今、ネット通信は完全無料であるべきか否やという議論が真っ盛りな時だけに、米メディアは「ネット史上、画期的な動き」などと一斉に取り上げた。

ネットフリックはこれまで動画配信仲介業者(Cogent Communications社)を経由してコムキャストのブロードバンド配信網にアクセスしていた。しかし、ネットフリックス社には最近、「番組や映画などの映像が、途切れたり安定しない」というクレームが殺到するようになり同社のヘイスティングCEO(最高経営責任者)が危機感を募らせ、コムキャストとの直接的な回線利用契約に踏み切った。会員3300万人以上を抱えるまでになったネットフリックスにとって安定した配信網の確保は死活問題。ヘイスティング氏は、同契約によってコムキャストのブロードバンド通信サービスに加入するネットフリックス・メンバーに安定したコンテンツ配信が可能になったと強調している。 

今後、コムキャストはネットフリックスが用意する専用サーバーに一定の帯域を保障する回線を提供する。複数年にわたる両社の契約内容などは公開されていないが、料金は年間25005000万㌦に上るという観測(Wedbush Securities社)が出ている。ただ、ネットフリックスがこれまでに仲介業者に支払ってきた費用と大きな差はない模様で、当面、ネットフリックス加入料の値上げなど消費者への跳ね返りは避けられそうだ。

コムキャストは、最近全米2位のCATV事業者タイムワーナー・ケーブルの買収計画を発表したばかり。すでに米連邦通信委員会(FCC)など政府監督機関から同計画が独占禁止法に抵触する可能性を指摘する声が上がっている中、いきなり巨額の利用料を徴収すればFCCなどから懸念が寄せられるとの判断も働いた模様だ。当初、ネットフリックスが回線利用料直払いの可能性を打診した際には年間4億㌦を要求したとの情報もある。次期契約更改時にはコムキャストが主導権を握るとの見方が支配的だ。

米国では最近、FCCが定めたネットの中立性ルール(開かれたインターネット)を連邦地裁が否定する判決を出しているが、今回の合意がネットの中立性を葬るきっかけとなる(USAトゥデー紙)などと捉える向きもある。

 

<テレビ朝日アメリカ 北清>