米報道に新風を吹き込むネット・サイト

下降線の一途をたどる新聞購読量、ネットワークテレビなどが伝える報道番組視聴率の低下など、米報道機関が抱える難題は多い。そんな中、米調査会社ピュー・リサーチ・センターが毎年発表する「State of News Media(報道機関の動向)2014年版」は、「インターネット上の様々なニュースサイトが新たな活性剤的役割を果たし始めている」と指摘している。特に若者層の間で、ネット上でみつけたニュースビデオ・クリップをソーシャルメディアを使って友人などに転送する傾向が格段に増えており、同層のニュース離れが頭痛の種となっていた米報道界にとって勇気づけられる結果となった。ピューのジャーナリズム・リサーチ担当部長エイミー・ミッチェル氏は、「デジタル報道に対する知識欲が旺盛になっている傾向があり、ニュースが到達する人口が拡大する可能性がある」と分析する。

ニュース・ビデオ・クリップについては、米成人の三分の一以上に相当する36%が、「インターネット上でニュース・クリップを閲覧する」と答えており、CNNなどニュース専門局でニュースを見る人(全体の34%)を超えるまでになっているのが特筆される。50歳以下になると、約半数がネット上でニュースを見ると答えている。

ただ、ネット上でビデオ(動画)を見る人は07年の40%から13年の63%と大きく拡大しているのに反し、ニュース・クリップのほうは同26%から36%と上昇率が鈍いことが、必ずしも楽観的になれない点だ。

同報告書は、新しいニュース・サイトとして、RedditBuzzFeedMashableVox.comなどを挙げているほか、Huffington Post や新興のVice Mediaなどが海外ニュース報道に予算を投入し始めていることに注目している。

ソーシャルメディアとニュース番組の関わりを見ると、フェイスブック会員が一番閲覧するジャンルに「芸能ニュース」が挙げられており、ソーシャルメディア利用者が見るニュースの内容に偏りがあることも浮き彫りになった。

さて、デジタルニュースに押され気味なのがニュース専門局。米国ではFoxニュース・チャンネル、CNNMSNBC3社が代表格だが、13年における3社のプライムタイム合計視聴者数は07年以来最低の記録となった。

一方、久方ぶりに朗報が転がり込んだのがローカル局の報道番組。朝のニュース番組の視聴者数が12年比6.3%増となったほか、夕方のニュース番組も3.3%の増加を示した。視聴者数が前年を上回ったのは5年ぶりのことだ。

<テレビ朝日アメリカ 北清>