米連邦最高裁、エーリオをめぐる審理

米連邦最高裁判所は422日、インターネットを使ったテレビ番組再送信サービスAereo(エーリオ)の事業が著作権侵害にあたる違法商行為に当たるとの放送事業者の訴えを受けて口頭弁論を開いた。裁判の行方は米消費者のテレビ視聴方法ひいては放送界全体の将来を左右するほどのインパクトがある、とあって米報道機関が一斉に取り上げた。

エーリオは2012年に立ち上げられたスタートアップ企業。地上波テレビ放送を各加入者に割り振った10㌣硬貨(幅1.7㎝)大の専用アンテナで受信しインターネット上に再送信(サイマル放送)している。加入者はパソコンを始め、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型情報端末を使ってテレビ視聴ができる。    米国ではペイテレビと呼ばれるCATV(ケーブルテレビ)、衛星放送、電話会社が提供する再送信サービスに加入してテレビを見ている人が全体の9割にも上るが、年々値上がりを続けている加入料に不満を持つ消費者が解約に踏み切る動きが加速している。エーリオはその動きに着目。月額加入料7.99㌦という安価で地上波テレビが放送する番組を「見たい番組を、見たい場所で、見たい時に、視聴できる」というのが売りだ。エーリオはクラウド上に番組を録画できるサービスを合わせて提供している。

ところが、エーリオがサービスを開始するや、地上波テレビ局やケーブル局を傘下に置くメディア企業などが一斉に反発。「高額予算を投入し制作した大事なコンテンツを無断で使用、私腹を肥やしている」などと、裁判所に対しサービス停止命令を出すよう求めていた。

口頭弁論では、エーリオ側が、「テレビ放送は無料で消費者に提供されているもの。アンテナを個々の加入者に提供、直接受信を代行しているだけ。エーリオ視聴は私的目的の行為であり著作権侵害にはならない」などと反論した。

最高裁のジョン・ロバーツ長官が、「規制をかいくぐるような商行為にも見える」などと厳しく詰問する場面もあった模様で、「最高裁は違法判断を下すのではないか(ニューヨーク・タイムズ紙)」などの見方も出ているが、行方はまったく読み切れないというのが大半だ。

エーリオ合法判断が出ればペイテレビ・システムが崩壊、ひいては米テレビ業界に大きな地殻変動が起きるのは避けらえないなどの見方も出ている。

最高裁は今年6月末までに判断を下すと見られている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>