タイム社が前途多難なスタート

米出版界で圧倒的な存在感を示していたタイム社が69日、米娯楽メディア複合企業大手タイムワーナー社(TW)から分社化され独立企業として新たなスタートを切った。2006年には売上高が10億㌦とグループ企業内の稼ぎ頭だったばかりか好ブランドの代名詞だった。しかし、その後の売上は下降線をたどるばかり。現在では37000万㌦にまで落ち込んでいる。約13億㌦の負債を抱え込んでいることもあり、9日は前週末に設定された参考株価比0.18㌦安で取引を終了、厳しい門出となった。

TWの最高経営責任者(CEO)、ジェフリー・ビューケス氏は、米メディア企業「メリデス」との合併を試みたたが失敗。リストラ策が後手に回ったことや再生への投資が希薄だったことなども指摘されている。

タイム社は1922年に創立後、経済誌「フォーチュン」、スポーツ専門「スポーツ・イラストレーテッド」、セレブの最新動向や暮らしの情報を伝える「ピープル」、さらにはニュース雑誌「タイム」など90誌以上を傘下に抱える大出版会社に成長。米社会への影響力も大きかったが、近年はインターネットの普及に押され店頭販売が姿を消すなど斜陽化した紙媒体の代表格に例えられていた。

タイム社復活は、元AOL副会長だったジョセフ・リップ氏の手に委ねられることになるが、リップ氏は手始めに本社屋を家賃の高いマンハッタン内ロックフェラー・センターからダウンタウンへの移転を決定した。そのほか、編集スタッフの25%を占める人員削減策に踏み切るなど身軽な態勢に切り替える予定。また、一部の雑誌を他社に売却するほか、米アラバマ州とロンドンに保有する不動産売却も検討している模様だ。

そして、最も力点を置くことになりそうなのが、雑誌と映像を組み合わせたメディア展開。すでにスタートさせているピープルを土台にしたエンターテイメント・ショー『People Now(ピープル・ナウ)』やフォーチュン誌の『The Chat (ザ・チャット)』などの動画サイトを拡充するほか、新たにタイムのあらゆるブランドを活かす動画ハブ(拠点)「The Daily Cut」を構築する。

一方、タイム社を分離したTWは、映画部門(ワーナー・ブラザース)、CNNTNTなどケーブル局群を抱えるテレビ部門(ターナー)、人気有料チャンネルHBOからなる3部門を中心に事業を展開していく。201413月期におけるタイム社の売上高はTW全体の1割弱に留まった。

<テレビ朝日アメリカ 北清>