米TV新シーズン、広告出稿が低調

新シーズンに突入した米テレビ界だが、広告出稿に活気がない。5月に行われた新シーズンのプライムタイム(午後811時)で放送される番組のCM前売り交渉(アップフロント)が例年になく不調に終わったことが尾を引いているうえ、各社、シーズン前の夏季特別期(68月)の視聴率が芳しくなかったことも広告主が広告出稿をためらう要素となっているようだ。そのため、アップフロントで温存していた残りのCM枠(通常1520%)が取引される交渉「スキャター・マーケット」も不調に終わるとの見方が広がっている。ちなみに、スキャターはシーズン直前から開始直後にかけ行われる。

米広告市場調査会社「キャンター・メディア」によれば、米国の一般消費財メーカーで最大の広告主でもあるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)をはじめ通信最大手AT&Tなど広告主トップ5のうち4社までが広告費全体を削減する動きを見せていて、メディア業界にとって不安材料の一つになっている。また、広告費をテレビの代わりに、インターネットやソーシャルメディアなどいわゆるデジタル・プラットフォームに振り分ける社も多いようだ。

世界最大級の広告会社「インターパブリック」傘下の調査会社「マグナ・グローバル」は、世界市場におけるネット広告が2017年までにテレビ広告を超えるとの見通しを示した。米国でも18年までにネット広告がテレビを追い抜くとの予測(イーマーケッター)が出ている。ちなみに、同社によれば、中国のデジタル広告費が360億㌦規模とされるテレビ広告を今年中に上回る、と推定している。現在同国のテレビ広告は全体の47%を占めている。

米調査会社「モフェット・ネイサンソン・リサーチ」は、今秋に実施される中間選挙のおかげでテレビ広告支出が持ちこたえられると見ているが、それでも14年のテレビ向け広告費を前年比6.6%増としていたものを、6.4%となる811億㌦に下方修正した。 

それでも、地上波テレビCBSネットワークなどを傘下に置くメディア大手「CBSコーポレーション」の最高経営責任者(CEO)は最近、投資銀行が開催されたメディア会合で、「CBSネットワークが今季から導入したNFL(米プロフットボール・リーグ)主催の試合中継番組が高視聴率を獲得するのは間違いないと)の見通しを示し、スキャター・マーケットに活気が戻り早期のテレビ広告衰退はないとの考え方を強調した。

<テレビ朝日アメリカ 北清>