インターネットテレビをMVPD扱いに

米国でオンライン・テレビ配信サービスがペイテレビと同等なサービスに位置付けられる可能性が出てきた。FCC(米通信委員会)のトム・ウィーラー委員長はこのほど、MVPD(マルチ・ビデオ・プログラミング・ディストリビューター)サービスの定義を改定し、インターネットをプラットフォームにしたテレビ局配信サービスをMVPDの一員として認めるよう提案した。

MVPDは現在、CATVに加え衛星放送と電話会社に限定されていて、すべての放送局やケーブル局の再送信・配信が許されている。MVPDは一般的にはペイテレビ・サービスと呼ばれているが、同提案は、オンライン・テレビ配信を目指す新興企業などにペイテレビ事業者のステータスを与えるものだ。実際の配信にはネットワークテレビやケーブル局との配信・再送信契約の締結が必要となる。

ウィーラー会長はブログの中で、「米消費者は長年に渡り、見たくもないチャンネルが満載の映像配信サービスに不満を訴えている。インターネット上のテレビ番組配信は、そうした消費者のフラストレーション解消につながるものだ。そのためには、(MVPDルールを改定して)インターネット・テレビが自由に番組にアクセスできることが重要だ」と訴えた。消費者が見たい、小数のチャンネルを廉価で選べる“アラカルト”方式の普及をオンライン・テレビ配信に託したい考えだ。

米国ではペイテレビに加入してテレビを見ている人が全体の約9割。各ペイテレビは数百チャンネル満載の映像配信サービスを月額平均80㌦ほどで提供しているが、実際に消費者が見るチャンネル数は17.5チャンネルほどだという。

ただ、ウィーラー委員長の提案は既存ペイテレビ・サービスの存続を危うくす可能性があるほか、様々なチャンネルを抱える米メディア企業にとって死活問題に発展する可能性もあり、各方面から反発が出るのは必至だ。

ペイテレビ事業はCATVが長年にわたり独占していたが1992年に、当時誕生したばかりの衛星放送にもMVPDの資格を与え競争を促そうと米連邦議会が改定した。後、電話会社(IPテレビ)も参入。現在の市場占有率は、CATV52%、衛星放送36%、電話会社12%(米調査会社LRG)となっている。

ウィーラー委員長の提案は様々な公聴会などで議論されたあと5人で構成される委員会で投票にかけられ賛成多数で採択されなくてはならない。投票までには少なくとも数カ月から1年かかると見られる。

<テレビ朝日アメリカ 北清>