IOC(国際オリンピック委員会)はこのほどモナコで臨時総会を開催、トーマス・バッハ会長が提案した40項目からなる五輪改革案「オリンピック・アジェンダ2020」を承認した。40項目の中にはホスト国が追加種目を提案できる案や種目の一部を開催都市以外や国外でも実施できる案などが含まれている。これにより、2020年に予定されている東京五輪で日本が得意とする野球やソフトボールなどが復活することや東京以外の競技場が使われる可能性が出てきた。
同総会ではまた、IOC独自の映像配信サービスを手掛けるオリンピック・ネットワークの創設も承認された。「五輪が開催されない年でも常に世界の人々にオリンピックに親しんでもらう環境を作りたい」としたバッハ会長肝入りの改革案の一つ。IOC関係者によれば、NBA(米プロバスケットボール協会)や大リーグ、ヤンキースが立ち上げている独自のテレビ・ネットワーク・サービスなどに類似したものを想定している模様。五輪ブランドに常に触れてもらい、五輪人気を持続させたい考えだ。
インターネットをプラットフォームにした動画配信サービスとしてスタートするが、将来的にはケーブル局の立ち上げなども検討している模様。放送内容はIOCが保有する45,000時間に上るアーカイブ素材がコンテンツの主軸になるという。中には1896年当時の競技映像などもあるようだが、主に近年の映像が中心になる。高額な放映権を払う各国の放送局に配慮し、同ネットワークでは原則、競技の生中継は一切しない予定。
同案に対しては早速懐疑的な声も上がっている。NBA-TVの創設にかかわった元NBA幹部のエド・デッサー氏は、「試合中継ができないネットワークが長続きするだろうか」と首をかしげている。「同ネットワーク創設の目標がオリンピック・ブランドの普及を目指しているのであれば、相当数の視聴者を魅了する必要がある。そのためには生放送がマストだ」と指摘している。
また、IOC関係者の中には、巨額な放映権を払っている米NBCネットワークのと関係にひびが入りはしないかと懸念する向きもあるようだ。アーカイブ映像にはNBC素材が多く含まれることが予想されるほか、NBCが使っている“オリンピック・ネットワーク”と同様な名前をIOCが使うことは出来ないとの声も上がっている模様だ。
同ネットワーク立ち上げは2017年が目標。放送用語は英語。スペイン語と中国語も検討されている。