米テレビ界で、毎年値上がり傾向が続く番組制作コストの一部を海外市場に求める動きが顕著化している。米経済紙ウォールストリート・ジャーナル紙などによれば、米地上波テレビネットワークのプライムタイム(午後8-11時)で放送される1時間番組の制作コストは平均300万㌦と5年前に比べ50%も値上がりを見せている。重厚な番組づくりや出演料が高いハリウッド俳優の起用が主流になってきているためだ。
だが高額制作費を番組中に流すCM(コマーシャル)による収入や米国内のシンジケーション(CATV局などの番組再放送)、あるいはインターネット配信会社への番組販売で賄える割合は約6割。残りの4割は海外テレビ市場が補てんしているのが現状だ。
米テレビ番組が海外で人気なのは今に始まったことではない。ABCネットワークの長寿番組『グレイズ・アナトミー:恋の解剖額(邦題)』などは60の外国語に吹き替えられ250の地域で放送されているという。子供向け専門のCATV局ニコロデオンの人気番組『スポンジ・ボブ』も世界185の地域で放送されるようになり、親会社バイアコムにとって過去最高の記録となっている。
そして、米テレビ界では今後ますます海外市場における番組人気が拡大することを見込んで、さらなる大型予算を投入した番組制作を手掛ける制作会社が大半を占めるようになった。米地上波テレビFoxネットワークが今シーズン(2014-15年シーズン)にデビューさせた大型ドラマ『Gotham (ゴッサム)』(バットマンのスピンオフ番組)などは番組1本当たりの制作費が400万㌦と平均を上回っているが、バットマンの知名度から当初から海外で引き合いがあることを織り込み済み。米国内だけでは赤字になることは承知の上でゴーサインを出したようだ。
ワーナー・ブラザース・テレビなどの制作会社を傘下に置く米メディア企業大手タイムワーナーのCEO(最高経営責任者)ジェフリー・ビューケス氏によれば、同社の13年の海外市場における番組再販収入は15億㌦。これに勇気づけられる格好で、番組制作に投入する資金は今後も増え続ける様子。18年には総額180億㌦に達する見込みだ。
ちなみに、日本でも多くのファンがいる『NCIS:ネイビー販売捜査班(邦題)』などの人気番組をプライムタイムで放送するCBSの13年海外番販収入は12億㌦に達しているが、今後は年間2億5000万㌦ベースで予算を増やしていく予定だ。