全米40%がSVODに加入

メディア業界を囲む環境が目まぐるしく変わる昨今だが、米国世帯の5軒に2軒が何等かの有料オンデマンド(SVOD)サービスに加入していることが明らかになった。テレビ視聴率調査などにあたる米調査会社ニールセンがこのほど発表した「ザ・トータル・オーディエンス・リポート」によれば、20141012月期に米成人が一日当たりにテレビ番組のリアルタイム視聴に費やした時間は4時間51秒と前年同期の5時間4分から減少していることが分かった。一方、パソコンを始め、ビデオゲーム機、DVDプレーヤーなどを使った SVOD視聴時間は一日当たり2時間45分と大幅に増えていることが分かった。同調査を監修したニールセン・インサイト部門の上級副社長ドゥーニア・タリル氏は、「(米消費者の)番組視聴がリアルタイム視聴からオンデマンド視聴に確実にシフトしている」と結論づけている。

米国におけるSVODサービスの代表格は「Netflix(ネットフリックス)」。加入料月額約8㌦を払えば劇場で公開済みの映画や放送後のテレビ番組、さらには同社が多額の制作予算を投入するオリジナル作品などが見たい放題。米国内加入者数は4000万人を超えた模様だ。全米テレビ世帯の36%が同サービスに加入するという圧倒的な人気ぶりだ。同サービスは、郵送レンタルからスタートしたが、いまでは基幹事業の座をストリーミング配信サービスに譲っている。 

ネットフリックスに続くのがオンライン通販最大手アマゾンが展開するストリーミング配信サービス「アマゾン・インスタント・ビデオ」。アマゾンの会員が利用できるサービスで年会費は99㌦。映画やテレビ番組のほか、ネットフリックスに続けとばかりにオリジナル作品も提供するようになった。ニールセンによれば全米世帯の13%がアマゾンに加入している。これにウォルト・ディズニーや21世紀フォックス、さらにはNBCユニバーサルなど米メディア企業大手が共同出資して運営する「Hulu(フールー)」の有料サービス「フールー・プラス」(月額約8㌦)が加入率6.5%で続いている。

タリル氏は、「SVODサービスが米メディア業界に新たなビジネス・チャンスを提供する機運もある」としているが、CATV、衛星放送、電話会社が提供するテレビ再送信・配信事業(ペイテレビ)からの解約(コードカッティング)傾向に拍車をかけ、ペイテレビの存続を脅かすことにもなりかねない、などと懸念の声も上がっている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>