視聴率低下に伴う広告収入の伸び悩みに苦しむ米ケーブル局の中で一人意気軒昂なケーブルチャンネルがある。若年男性をターゲットにしたエンターテイメント・チャンネル「Adult Swim(アダルト・スイム)」がそれだ。テレビ朝日系の『クレヨンしんちゃん』なども放送されたことのある同チャンネルは米メディア企業大手タイムワーナー傘下の人気子供向けチャンネル「カトゥーン・ネットワーク」が放送を休止する深夜帯を利用した創設14年目のパートタイム・ネットワーク。
アルコール中毒の父親に認められてもらおうと葛藤する十代の男の子を取り巻く様々なエピソードが展開する『Squidbillies(スクイード・ビリー)』や元ボクサーのマイク・タイソンがミステリーを解明する『マイク・タイソン・ミステリー』など、ヤング・アダルト向けのアニメ番組などを武器に、広告主が喉から手が出るほど欲しい若者視聴者の中でもとりわけ重要な18-34歳層をしっかり掴んでいる。
ちなみに、昨年のベーシック・チャンネル全体の同視聴者層は前年度比14%もの落ち込みを見せたが、アダルト・スイムはまったく変動なし。過去10年間にわたり同層視聴率ナンバーワンの座を維持している。同局視聴者の年齢中央値は24歳。他ケーブル局や地上波テレビ視聴者の年齢中央値の半分以下という若さだが、アダルト・スイムの異色な編成内容が同視聴層を魅了している。
一方、他ケーブル局の不振ぶりには目を見張るものがある。米調査会社「モフェット・ネイサンソン・リサーチ」によれば、2014年のケーブル局全体の視聴率は、放送後3日間の見逃し視聴を入れても前年比9%の減少。広告収入はたった1%増という厳しい状況だ。高額予算を投入した様々なオリジナル番組が不発に終わっている上、ケーブル局編成の要となっている地上波テレビネットワーク番組の再放送から視聴者が離れ始めているのが主な要因のようだ。かつては一定の視聴率を確約してくれた犯罪捜査番組『ロー&オーダー』や『NCIS:ネイビー犯罪捜査班』、さらには人気コメディー『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』など再放送版の人気衰退ぶりが顕著だという。
さらに若者視聴者による視聴習慣の変化も追い打ちをかけている。同社では、「有料オンデマンド(SVOD)視聴が急速に拡大し、ケーブル局視聴率低下に寄与していることは間違いない」と結論付けている。