米メディア企業が一大ターゲットにしている子供向け放送に新しい動きがあり、今後賛否両論を呼んでいくことになりそうだ。話題のチャンネルは今年1月に本格的な放送にこぎつけた子供向け専門局「BabyFirstTV(ベビー・ファースト・テレビ)」。
米テレビ界では、全国小児科学会(AAP)が2歳以下の幼児にはテレビを見せないよう推奨していることなどもあり、同層を対象にした番組は制作しないというのがこれまで業界の常識だった。
ところがベビー・ファーストの編成は2歳以下の幼児はもとより6ヵ月の赤ちゃんをも対象にした番組で構成されるとあって物議を醸し出している。
同チャンネルの番組はアニメ番組が中心。幼児に言葉や数え方、さらには色や様々な形などを教えることに目的が絞られているという。同局の共同設立者シャロン・レクター氏は、米経済紙ウォールストリート・ジャーナルに、「重要なのはどんな内容の番組を幼児に見せるかということ。我々の番組は最も安全な内容だ」と力説している。
健康問題などを扱うカイザー・ファミリー財団のように「様々な調査で、実際にはほとんどの幼児がテレビを見ていることが分かっている」と現実論を披露する向きもある。
ベビー・ファーストが設立されたのは2006年のこと。テレビ世帯への到達率が極めて低かったこともあり米広告業界などから注目されることはなかった、だが、9年目にして同チャンネルの視聴可能世帯数が5000万軒に到達。米ニールセン社が視聴率測定対象チャンネルとして扱うこを決定した。今年第3四半期には同局番組の視聴率が公表される運びだ。
広告主の中には今夏以降、「視聴率発表をまって、スポンサーになるかどうか検討する」などと前向きな姿勢を示す動きもあるようだ。
米国の子供向けチャンネルは、ディズニー・チャンネルやニコロデオンの既存放送に加え、インターネットを使った番組配信サービス、ネットフリックスやアマゾン・インスタント・ビデオなどでも子供番組が満載。放送事業者にとって激戦区となっているが、ベビー・ファーストでは「廉価な制作予算で十分採算がとれるはず」と抱負をかたっている。番組は主にイスラエルで制作され、セリフがほとんどないことから海外への番組販売も容易だという。
ちなみに、米調査会社キャンター・メディアによれば、2014年に子供向け番組に支出された広告費は12億㌦に達した。