コムキャスト、TWC買収を断念

米ケーブルテレビ(CATV)最大手コムキャストは424日、同業界第2位のタイムワーナー・ケーブル(TWC)の買収を断念すると発表した。コムキャストは昨年2月、TWC452億㌦で買収する計画を発表したが、ここにきてFCC(米連邦通信委員会)や司法省などが両社の合併を懸念する立場を明確にしたことや、連邦議会の一部から合併反対の動きが出てきたこともあり、承認は得られないとの判断に至った模様だ。コムキャストは前日、FCCとの会合に臨んだがその時、FCCサイドから事案を特別公聴会にかける意向が示されたことが「死刑宣告に等しいものとなった」(著名アナリスト、リッチ・グリンフィールド氏)という。

コムキャストの最高経営責任者(CEO)ブライアン・ロバーツ氏は声明の中で、「買収計画には、もし米政府の承認が得られなければ取りやめるとの条項が盛り込まれていた。もちろん我社の優れた商品・サービスを国内の他のエリア(TWCのサービスエリア)に拡大したかったが、今日をもって(次の課題に向け)進んでいく」と述べた。TWCのロバート・マーカスCEOは、同社ビジネスが今後も堅調さを維持していくことを強調した。

両社の合併が実現していれば、ペイテレビ市場の30%、さらにはブロードバンド通信サービスの57%を支配下に置く巨大勢力が誕生するはずだった。そのため、業界の寡占化を懸念する消費者団体やペイテレビとの交渉で強い立場を維持し続けたい放送事業者、さらにはブロードバンド通信がビジネス展開に必須のアマゾンなどからは安堵の声が上がっている。

CATV業界は基幹事業である地上波テレビ局の再送信とケーブル局の配信ビジネス(ペイテレビ・サービス)が、新興の衛星放送事業者に押され気味なこと、テレビ局からの再送信料や配信料の値上げ攻勢に加入料値上げを余儀なくされ、それを嫌った加入者による解約傾向が著しくなっていること(コードカッティング現象)、ネットフリックスに代表される動画配信サービスの台頭で新規加入者獲得が難しくなっていること、などから業界再編成の必要性が指摘されている。

実際、コムキャストがTWCの買収断念を発表すると、同業界4位のチャーター・コミュニケーションズがTWC買収の検討を始めたとのニュースが流れた。

一方、コムキャストの今後についてウォール街からは、「全国向けの動画配信サービスの展開に着手する」などの見方が出ている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>