躍進を続けるインターネット(デジタル)広告売上高が今年、600億㌦台に接近しそうだ。米調査会社eMarketer(イーマーケッター)がこのほど発表した調査結果によると、デジタル広告拡大を担うのが小売店業界。自動車や金融サービス業界を大きく引き離し、全体の22%を占める129億1000万㌦規模の支出を担うことになりそうだ。
同業界は他広告主に比べ、特にモバイル広告やビデオ広告(テレビCM型)、さらには米広告業界でにわかに脚光を浴びている「プログラマティック広告」(運用型広告ともいわれる、リアルタイムな広告枠の自動買付)への出資に熱心だという。
小売業に続きデジタル広告に力を注ぎ始めたのが自動車業界。広告予算全体の12.5%、73億㌦をデジタル広告に宛がうという。今回初めて金融サービス業界を追い抜き2位に食い込んだ。自動車に僅差で続くのが金融サービスで71億9000万㌦(シェア12.3%)。
以下、電話・通信業が11.1%で4位。これに、消費財8.5%、旅行業界8.3%、コンピューター&家電7.6%、メディア5.8%、エンターテイメント4.8%、健康・医療2.8%などと続いている。
今回調査に当たったイーマーケッターの主任アナリスト、ヴィクトリア・ペトロック氏は、「すべての広告主がデジタル広告に飛びつき始めているわけではない。それぞれ、購買者を想定し、様々な媒体を使い分けているのが現状だ。小売業界の出稿先と並行するが、デジタル広告の中で脚光を浴びているのがモバイル広告、ビデオ広告とプログラマティック広告だ」と解説している。
一方、若者の間で急速に広がるスマートフォン人気に呼応するかたちで、重要度を増しているモバイル広告は2015年に総額287億2000万㌦に達する見込み。業界別の支出額を見ると、小売が全体の23.2%を占める66億5000万㌦。これに金融サービスの34億9000万㌦(12.1%)、自動車の34億3000万㌦(12.0%)などと続いている。
また、一躍注目を集め始めたプログラマティック広告の需要は今年148億8000万㌦ほど。同広告出稿者トップは同じく小売業で37億1000万㌦(同24.9%)。これに消費財の21億㌦(14.1%)などが続いている。イーマーケッターでは、「消費財メーカは、一斉にプログラマティック広告にシフトし始めている。具体的な消費者グループに直にアプローチ出来ることを重んじているためだ」と分析している。世界最大の広告主プロクター&ギャンブルはデジタル広告予算の70%を同広告手法に振りかえるという。