ディッシュがTモバイルと合併か

米衛星放送大手ディッシュ・ネットワークはこのほど、米携帯電話4位の「TモバイルUS」と合併に向けた交渉を進めていることを明らかにした。ディッシュの時価総額は約350億㌦、Tモバイルは310億㌦とされている。

今年5月には通信第2AT&Tが、衛星放送最大手ディレクTV485億㌦で買収する計画を発表していて、それぞれの合併が実現すれば、米衛星放送2者が揃ってテレコム事業にかかわることになる。

加入者数1380万人(ウォールストリート・ジャーナル紙)を抱えるディッシュはディレクTVに続く衛星放送第2位。携帯電話通信に有効な低周波帯域を多く保有していて、ワイヤレス通信事業進出のきっかけを模索していたが、独自サービスの立ち上げよりも既存通信社との合弁が得策と考えTモバイルに白羽の矢を立てた格好だ。

テレビ番組など映像配信事業が中心のディッシュはTモバイルの携帯電話通信及びモバイル向けのブロードバンド通信をフルに活用し、特に映像配信サービスからの離反傾向が目立つ若者層に人気の動画配信サービス立ち上げを狙っているという。ちなみに、米国ではスマートフォンやタブレット型情報端末を使った番組のモバイル視聴が急伸している。

また、ディッシュ・ネットワークは今年1月、インターネット上のケーブル局配信サービス「Sling TV(スリングTV)」(有料)を立ち上げたが、Tモバイルが運営するワイヤレス通信をパッケージで提供すれば付加価値を感じる若者加入者の獲得に役立つと考えている模様だ。

一方、4470万人(同紙)の加入者数を保有するTモバイルは、業界最大手ベライゾンや2位のAT&Tに大きく水を開けられているのが現状。さらなる事業拡大を狙うTモバイルは、加入者拡大に必須な帯域をディッシュ・ネットワークから得ることが出来ることになる。  

ディッシュ・Tモバイルの合併については、通信・映像配信市場の占有率などに大きな変更が生まれないことなどから、米政府当局の厳しい審査を免れ承認されるとの観測が出ている。

ところで、Tモバイルといえば、20137月に米携帯電話第3位のスプリントを買収して米携帯電話市場への参入を果していたソフトバンクが、さらなる勢力拡大を目指し買収に乗り出していた会社だ。しかし、Tモバイル側が交渉に興味を示さなかったことなどから断念した経緯があり、今回の買収劇の行方が気になるところかもしれない。

<テレビ朝日アメリカ 北清>