米動画配信サービス大手「Hulu(フールー)」がCM(コマーシャル)挿入なしの番組配信サービスを検討していることが明らかになった。米経済・ビジネス専門紙ウォールストリート・ジャーナルが報じたもので、新サービスは早ければ今秋にもお目見えするという。フールーは現在、無料版そして月額7.99㌦を課金しているプレミアム・サービスで配信されている番組などにもCMを挿入しており、同社ビジネス戦略に大きな転機が訪れることになりそうだ。
米若者視聴者層の間で人気急上昇中のネット上の番組配信サービスは最大手「ネットフリックス」に加え、オンライン通販最大手アマゾンが展開するストリーミング配信サービス「アマゾン・インスタント・ビデオ」に続くフールーが3強。フールーは、断トツの人気を博しているネットフリックス(月額料金7.99㌦)がCM無しの番組配信で大きな成功を収めていることに着眼した。ちなみに、アマゾンが配信する番組にもCMは挿入されていない。
フールーは2008年3月、米メディア娯楽企業大手、ウォルト・ディズニー、21世紀フォックス、コムキャスト(当時、NBCユニバーサル)が共同出資して立ち上げられた。地上波テレビネットワーク番組などが放送翌日に無料で視聴できるとあって若者の間に瞬く間に人気となった。
ところが、フールー人気に触発されてネットフリックスなど次々に新サービスが登場、加入者争奪戦が激化したほか、CM挿入を貫いたフールーに若者層が背を向けた格好となった。ある調査によれば、好きな番組を好きな時間に数話まとめて見る“ビンジ・ウォッチ”が好みの若者層にCM入り番組が敬遠されているという報告もある。無料版はスマートフォンやタブレット型情報端末などでは視聴できないこともハンディとなっているようだ。
フールーの新サービス加入料金は、既存メンバーの“サービス乗り換え”を防ぐために、12-14㌦(月額)と高めに設定される模様。しかし、CMが無くなるとはいえ、他社を超える高額料金などが新規加入者獲得のハードルになる可能性もありそうだ。
現在フールーの加入者数は全世界で約900万人。昨年の600万人から増大しているとはいえ、ネットフリックスの6500万人超に大きく水をあけられている。フールーの今年度の売上高は15-17億㌦となる見込み。これに対しネットフリックスの14年の売上高は55億㌦に達している。