アップフロント売上が87億㌦ 

 米地上波テレビネットワークが9月から始まる新シーズンのプライムタイム(午後811時)で放送する番組のお披露目と番組内で放送されるCM(コマーシャル)前売り販売交渉「アップフロント」がこのほど完了した。4大ネットワーク(ABCCBSFOXNBC)全体の売上高を見ると、昨年比3%ほどの減少となる87億㌦(広告業界誌アドバタイジング・エイジ)でまとまった模様だ。同売上高は3年連増で前年度を下回ったことになる。

 視聴者必見の番組が減少傾向にあるなか広告主によるテレビ番組への投資ムードが冷え込んでおり、もし来年の80億㌦を割り込むようなことがあれば、09年リーマンショック以来最悪のものになるとの懸念も寄せられている。交渉後、CM枠全体の2025%が放送開始後以降に温存されているという情報もある。

 今回の交渉では、放送後7日間のCM視聴率(C7)を番組成功度の尺度に採用することに同意した広告主が昨年より増えたという報告も出ている。

 一方で、“テレビ離れ”が顕著になっている若者視聴者を追いかける形で広告予算をデジタル番組に振りかえる動きも顕著になり始めていて、アップフロント交渉に少なからぬ影響を及ぼしていることが浮き彫りになった。これに対しネットワーク各社は対応策として広告主が特定層にターゲットが絞りやすい番組視聴状況を示すより詳細なデータを提示する動きを加速させている模様だ。

 ネットワーク別で見ると、最大のCM単価値上げ率を勝ち取ったのがABC。『グレイズ・アナトミー:恋の解剖学』のプロデューサー、ションダ・ライム氏が手掛ける番組で木曜プライムタイムすべてのラインアップを固めた編成や、今シーズンお目見えする新番組の中でも最も注目されている人形劇・コメディー番組『ザ・マペット』などを中心とした水曜日のコメディー編成が広告主に好感されたようだ。

 今シーズン、広告主が重要視する視聴者層(1849歳)で視聴率トップに立ったNBCは、相変わらず超人気のNFL(米プロフットボール協会)中継番組『サンデー・ナイト・フットボール』に買いが集中した。CBSは米テレビ界で最も人気のある、そして最も制作費の高額なコメディー番組『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』を軸にアピール。FOXは今シーズン後半にわかに大ヒット番組となったヒップホップ・ドラマ『エンパイア』などが交渉のカギを握ったという。
<テレビ朝日アメリカ 北清>