今夏ケーブル局視聴率が低調 

 米テレビ界の夏季特別期間視聴率が低調に終わったことが明らかになった。中でも、通常は“夏に強い”ケーブル局の不振ぶりが顕著だった。米ニールセン社によれば、7月における人気ケーブル局30社のプライムタイム視聴率は軒並み二桁台の落ち込みを見せる悲惨な結果に終わった。

 タイムワーナー傘下の「TNT」は7月の月間視聴率王に就いたが、平均視聴率は前年同月に比べ22%の落ち込み。コムキャスト傘下の基幹ケーブル局の一つ、人気リアリティー番組などで知られる「Bravo(ブラボー)」は同23%減。バイアコム傘下の若者向けチャンネル「MTV」は同24%も減少するといった具合だ。

 唯一前年の視聴率を上回ったケーブル局は「ディスカバリー・チャンネル」。今年で4シリーズ目となるリアリティー番組『Naked and Afraid』や同局の長寿番組でサメを扱ったドキュフィクション(ドキュメンタリー風フィクション番組)『SharkWeek』が貢献した。ちなみに、Nakedは野生地域に放り出された初対面の男女二人が全裸で21日間にわたり食料や水などを確保しながらサバイバルに挑戦する模様を追うもの。

 ケーブル局の不振については、様々な見方があるが、株式会社電通の編成担当副社長ビリー・ゴールド氏は、夏季を利用したキャッチアップ視聴の隆盛を要因に挙げる。シーズン中に見逃した話題の番組などを夏季特別期にオンデマンド・サービスなどを利用し一気に視聴する“ビンジ・ウォッチ”が定着し始めていて、ケーブル局番組が見落とされているという。

 また、かつては再放送番組編成で夏休みシーズンを凌いでいた地上波テレビネットワークが、ケーブル局に視聴者を奪われまいと新番組を放送するようになったこともCATV局業界に影を落としている。実際、ABCFOXCWネットワークは昨年夏に比べ視聴率が上昇した。だが、CBSNBCはそれぞれ4%5%の低下を記録。CBSはわずか3年前にデビューさせた大型SF番組『Under the Dome』を今季限りで打る決定を余儀なくされていて必ずしも順風満帆とは言えない状況だ。

 地上波テレビおよびケーブル局を合わせた今夏のプライムタイムの平均視聴者数は9470万人。昨年夏に比べ3%減少、13年比6%の落ち込みを示しているが、米調査会社モフェット・ネイサンソンは、ニールセンが視聴率測定をしていないモバイル・ディバイスなどを利用した番組視聴が増えていることも視聴率減退の原因となっている、と分析している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>