スマートフォンやタブレット型情報端末の普及につれて、米国におけるモバイル向けの広告費がデスクトップ型パソコン(含むノート型パソコン)向け広告費を上回る勢いだ。米調査会社eMarketer(イーマーケッター)がこのほど発表した広告費の長期予報によると、2015年はモバイル広告のインターネット広告全体に占める割合が51.9%と過半数を超え、初めてデスクトップ型パソコン向け広告を上回る画期的な年になるという。
同社の予測では、米モバイル広告は15年に前年比59%増となる304億5000万㌦に達し、同社が今年3月に出した予想を上回るスピードで拡大する見込みだ。しかし、来年以降、増加率は緩やかになり、16年は前年比38%増の420億1000万㌦。17年は同21%増の508億4000万㌦。19年には13%増654億9000万㌦レベルになるという。
広告主のモバイル広告に対する注目度は日に日に強くなっているが、企業によってはテレビや新聞など既存媒体向けの広告予算をモバイルに振り向ける向きが増えているようだ。同社のアナリスト、マーチン・ウトレラス氏は、「米消費者によるモバイル・ディバイスを使ったオンデマンド視聴が飛躍しており、広告主をモバイル広告に引き寄せている。特に犠牲になっているのが新聞と雑誌媒体だ」と解説している。その他、地域向けの中小企業などの間でモバイル向けの広告出稿が盛んになっていることも要因の一つになっている。
イーマーケッターによれば、米成人が一日当たりに費やす、通話以外のモバイル利用時間は2時間51分。そのうち半分以上にあたる1時間31分がスマホ利用にあてられているという。
モバイル広告は15年に米国の総広告費の16.6%を占めるまでに拡大するが、同時に新聞や雑誌を含む紙媒体(全体の15.8%)を上回る勢いを示している。
15年における全媒体のシェアを見ると、テレビ向け広告が引き続きトップで37.9%。これにインターネット広告34.4%、プリント媒体広告15.8%(新聞8%、雑誌7.8%)、ラジオ広告8.2%、屋外広告3.9%、ディレクトリー向け広告(電話帳他)2.5%となっている。
ちなみに、イーマーケッターでは17年のインターネット広告が総広告費の37%を獲得、初めてテレビ広告(同36.3%)を追い抜くとみている。ネット広告はその後も18年に全体の39.2%に増大したのち、19年には41.4%と40%台を超過する見込みだ。19年のテレビ広告は全体の34.6%と踏ん張る格好だが、新聞(5.7%)や雑誌(6.5%)は縮小の一途をたどりそうだ。