ニュース専門局CNNや映画会社ワーナー・ブラザースなどを傘下に置く米メディア企業大手タイムワーナー(TW)がこのほど発表した2015年7-9月期決算報告が一時、米メディア界に大きな波紋を投げかけた。同期の売上高は前年同期比5.1%増となる65億6000万㌦。純利益は7%増10億4000万㌦と増収増益となったものの、16年以降向こう3年間の収益予想が当初のものを下回るとの見方を明らかにしたからだ。
加えて、傘下のケーブル局の視聴可能世帯数が前年同期比1.5%減と同社の予想1%減を上回ったことも既存テレビ放送事業が置かれている環境が変わりつつあるとの受け止め方を誘い、象徴的なマイナス要因となった。
同社の株価(一時6.5%下落)はもとより他メディア企業の株価が連鎖反応を起こすかたちとなり軒並み低下、市場には既存メディアの将来性を危ぶむちょっとしたパニック・ムードが広がった。
決算内容を見ると、グループ全体に寄与したのが映画やビデオ・ゲームなどを扱うワーナー・ブラザース部門。同期に封切られた映画『マジック・マイクXXL』などの興行成績が芳しくなかったものの、『LEGO Dimensions』や『マッドマックス』などのビデオ・ゲーム売上が好調。さらにCBSネットワークで放送されている人気コメディー番組『2 Broke Girls(NYボンビー・ガール:邦題)』やサスペンス・ドラマ『Person of Interest(パーソン・オブ・インタレスト)の米国内ケーブル局への番組販売(再放送)やデジタル配信サービスなどへの番販が活況を呈し、売上高は前年同期比15%増となる31億9000万㌦を記録した。ロイター通信は、番組販売だけで同社の売上の約半分を占めるほど好調だと分析している。
売上高でワーナー・ブラザース部門に次いだのが、ケーブル局を束ねるターナー部門。デジタル配信サービスなどへの番組販売が低調だったほか、ケーブル局番組の広告収入がほぼ横ばいと伸び悩んだことで、売上高は前年同期比2%減となる24億㌦に留まった。
両部門につづいたのが有料チャンネル、ホーム・ボックス・オフィス(HBO)部門。配信料収入が増えたことや番組販売が好調だったことも手伝って売上高は5%増となる13億6000万㌦を記録した。HBOは、去る9月に開催されたテレビ界最高の栄誉エミー賞で過去最高となる43カテゴリーでノミネートされたほか、合計14部門でエミー賞を獲得するなど、クォリティー番組の宝庫として絶対的な存在感を発揮している。