米テレビがCMタイム短縮へ 

 米テレビ番組中に放送されるCM(コマーシャル)タイムが減少する方向に動きだした。放送事業者や広告主が喉から手の出るほど欲しい若者視聴者が地上波テレビとケーブル局からなる既存テレビからの離反を始めている要因の一つに同層の“CM嫌い”があることと、同視聴者層がCM無し、あるいは極端に少ないインターネット配信サービスに流出し始めていることに危機感を抱いている結果だ。

 若者に人気のMTVやコメディー・セントラル、さらには子供向けチャンネルの老舗ニコロデオンなど多数のケーブル局を傘下に置く米メディア企業大手バイアコムはこのほど、プライムタイム(午後811時)で放送される番組のCMタイムを大幅に縮小する計画を明らかにした。番組名や具体的な時間などは公表されていない。同社ケーブル局は、もともとCMタイムが多いことで知られている。業界誌「ブロードキャスティング&ケーブル」によれば、同社の番組はCMが多いため、本来なら30分番組が6本放送されるべき3時間枠に5番組しか収納できないほどだという。

 CMを減らそうとしているのはバイアコムだけではない。タイムワーナー傘下のケーブル局truTV(トゥルーTV)は20161012月期をめがけ、現在プライムタイム1時間番組に挿入されているCMタイム18分間を10分間に大幅短縮する予定だ。米調査会社サンフォード・バーンステインによれば、もし実際に実行されれば、米テレビ界で最もCMの少ない番組を放送するケーブル局になるという。「CM量が減れば若者視聴者の間で話題となり人気を取り戻すことができる。ひいてはCM単価を上げることも可能となる」との思惑も見え隠れする。

 このほか、ドキュメンタリー番組などで知られるディスカバリー・チャンネルなどを抱えるディスカバリー・コミュニケーションズは昨今、番組視聴率が上昇し始めた番組のCM挿入を減し始めた。地上波テレビFOXネットワークでも、今年で2年目に突入した大ヒット作『エンパイア』(ヒップホップ・ドラマ)のCM枠は他番組よりも少なく抑えているという。いずれも既得視聴者死守が狙いだ。

 一方、ネット配信サービスも、ユーチューブが10月下旬にCM無しの番組配信サービスを始めたほか、米メディア企業大手NBCユニバーサルが来年1月を目標にCM無しのコメディー専門番組配信「SeeSo(シーソー)」を立ち上げるなど、“ノーCMで若者獲得”合戦が過熱している。

<テレビ朝日アメリカ 北清>