不振番組の寿命が伸びる傾向に

 9月から始まった米テレビ界新シーズン(201516年シーズン)でちょっとした異変が起きている。高視聴率獲得に期待が寄せられたものの不発に終わった新番組の寿命が従来に比べ飛躍的に述びているのだ。近年、視聴率が浮揚しない新番組は34エピソード終了あたりでキャンセルされるのが常だったが、新シーズンでは各ネットワークテレビ経営陣が78エピソードが放送されるまで様子を見ているのが現状だ。

 地上波テレビネットワークが放った新番組の中で初のキャンセル番組となった『Wicked City(ウィケッド・シティ)』は、初回こそ広告主が重要視する視聴者層(1849歳)の視聴率が0.9%(視聴者数330万人)とギリギリ合格点をクリアーしたものの、2回目は同0.7%240万人)、3回目が0.4%169万人)とみるみるうちに視聴率が下降。しかし、番組が打ち切られるまでに9エピソードが放送された。ちなみに、同番組は、1980年代、ロック音楽と麻薬問題が蔓延したロサンゼルスで起きた連続殺人事件がテーマ。

 低視聴率番組の寿命が伸びた背景にはいくつかの要素が挙げられる。筆頭に挙げられるのが「見たい番組を見たい時に見る」タイムシフト視聴の隆盛だ。放送時の視聴率が悪くても、HDD内蔵型のデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)やネットワーク各社がホームページ上に提供する追っかけ視聴サービスなどを利用した視聴者数が番組によっては放送時のものを上回るものまで現れ、英断(打ち切り)が遅れるケースが多いという。

 また、米テレビ界では番組の成功度は、放送後3日間のCM(コマーシャル)視聴率(C3)が基準になっているが、データが上がってくるまでに3週間もかかるのが現状で、番組幹部の判断を遅らせる要因となっている。

 放送が打ち切られた番組は、ネットフリックスやアマゾン・インスタント・ビデオなどインターネット配信会社に再販される例が多く、できるだけ長く放送すればより詳細な視聴者分析データが得られ、番販に役立つとの考えも背景にあるようだ。ネット配信会社は、マス・オーディエンスを求めるよりも、ニッチな視聴者を対象にする傾向があるためだ。

 ところで、今シーズン、タイムシフト視聴数が目立って多いため、早期打ち切りの懸念がない番組には、NBCネットワークの大型サスペンスドラマ『Blindspot』やCBSの『スーパーガール』、さらにはABCFBIドラマ『Quantico』などが挙げられている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>