子供向けチャンネル衰退に危機感

 米子供向け専門テレビ局が急激な視聴率下降現象に危機感を抱いている。金融コンサルティング会社大手モルガン・スタンレーの推定によれば、2013年半ばから157月までの間に子供向けチャンネル大手が失った視聴者数は211歳層で30%も急減した。一般編成ケーブル局が失った1849歳層視聴者12%減少と比べ極めて大きな急落ぶりだ。

 子供チャンネルの老舗ニコロデオンなどを傘下に置く米メディア企業大手バイアコムやカトゥーン・ネットワークを抱えるタイムワーナー、さらにはディズニーやディスカバリーなどにとって子供チャンネルはテレビ番組への忠誠心を示してくれる視聴者のホームグランドとして重要ばかりか、ヒット番組のキャラクター商品などは重要な放送外収入源になっているという側面もある。広告主にとってはやがては成人となる予備軍的存在の同層に商品などのブランド名を浸透させる大切なプラットフォームだ。

 メディア各社は子供視聴者におけるデジタル配信サービ人気に注目している。業界誌バラエティーは、幼児や学齢児童の間で、スマートフォンやタブレット型情報端末を使った動画視聴が既存のテレビ視聴を侵食し始めていると分析している。

 動画配信最大手ネットフリックスやアマゾン・インスタント・ビデオなどはメニューに子供向け番組を豊富に揃えている。ユーチューブでは、子供に好まれる短編番組や素人の投稿番組など充実させ、201513月期には前年同期の22%増となる560万件のユニークビューアー数を勝ち取った。 

 これらの流れを受け、「同層によるテレビ離れを今のうちに食い止めなければ将来テレビを見てくれる人がいなくなってしまう」という危機感のもと、既存メディア側も対応策を講じ始めている。米有料チャンネルの雄HBOは、子供向けテレビ教育番組として世界的に知名度もある『セサミ・ストリート』向こう5シリーズの独占放映権を獲得したことが特筆される。

 また、子供たちの間でビデオ・ゲームが圧倒的な人気を博していることから、新番組の制作と並行してビデオ・ゲームの開発に当たる動きが目に見えて加速している。カトゥーン・ネットワークの社長兼ゼネラルマネジャーを務めるクリスチーナ・ミラー氏は、「今後は、番組を放送のみならず、マルチプラットフォーム(特にデジタル)で成功させることがより重要なタスクとなっていくだろう」と述べている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>