米TV界、ドラマ番組がバブル状態

 2015年に米消費者に提供された番組はドラマ・コメディーだけで過去最高となる約400本(ニューヨーク・タイムズ紙)。視聴者にとって選択肢が増えることは決して悪いことのように思えず、「米テレビ界は黄金時代を迎えた」などと、15TV界を好意的にとらえる向きもあるが、「番組バブル状況に陥っている」と悲観的な見方も出ている。

 米調査会社Hub Entertainment Researchによれば、米市民の過半数以上(51%)が、「(番組の)あまりの多さに圧倒されている。どの番組を見たらいいのか迷う」と答えている。14年に実施された同様な調査結果42%からほぼ10%急増しており、視聴者サイドは若干戸惑っていることが明らかになった。

 

 そして、番組本数が多いと感じているのは視聴者だけではない。米企業大手21世紀フォックス傘下の若者向け人気ケーブル局FXの最高経営責任者(CEO)ジョン・ランドグラフ氏は今夏、「テレビ番組が多すぎる」と明言、米テレビ界がバブル時代後半に差し掛かっているとの見方を示した。

 一方、番組編成を振り返ると、15年は特に地上波テレビネットワークの間で、スポーツ番組への依存度がますます増大したことが明らかだ。相変わらず視聴率で他番組を寄せ付けないNFL(米プロフットボール協会)試合中継番組『サンデーナイト・フットボール』(NBCネットワークが毎週日曜夜放送)に代表されるすべてのNFL番組人気が健在のほか、有料チャンネルHBOShowtimeが放送したボクシング試合中継番組(世界ウェルター級王座統一戦)が過去最高となる4億㌦のペイ・パー・ビュー売上を記録するなど、話題を振りまいた。

 また、視聴者の間で「自分の好きな時間に好きな番組をみる」タイムシフト視聴が本格的な普及を見せていることを受けて、各ネットワークの間で番組視聴率を放送後3日間あるいは7日間のものを重視する傾向が高まった。FOXネットワークは、161月からプライムタイム番組視聴率の翌日発表(一般向け)を打ち切ると発表した。

 その他、ネットワーク編成内容を見ると、往年のヒット作や人気映画のリメイク版の登場が目立った年でもあった。FOX161月から放送するサイファイ・ドラマ『Xファイル』、トム・クルーズ主演映画のテレビ版『マイノリティー・リポート』(FOX)、超能力をテーマにしたサイファイ・ドラマ『ヒーローズ』のリメイク版『ヒーローズ・リボーン』(NBC)などが挙げられる。

<テレビ朝日アメリカ 北清>