2016年の世界市場における広告支出は15年に比べ安定した成長を示す兆しが見えてきた。広告会社大手3社が昨年末一斉に発表した予報によると16年の広告支出は前年比5%弱増と、3.2-3.9%増となる見込みの15年から改善されることになりそうだ。主な要因として、米国の大統領選挙やブラジルで開催される夏季五輪、さらには欧州サッカー連盟(UEFA)が主催するナショナルチームによるサッカーの大陸選手権大会「UEFA欧州選手権」などが挙げられている。
3社それぞれの予測内容を見ると、マグナ・グローバルの16年広告支出は4.6%増となる5260億㌦。インターネット広告が拡大する一方で、テレビ向け広告が1.4%増と停滞気味になることを予測している。米国や英国などの先進国に加え、新興国においても広告主がターゲットにしている18-49歳層の既存テレビ離れが同媒体への広告出稿をためらわせる結果になるという。
ゼニス・メディアは16年の広告費を4.6%増とみているが、長期予報の中で、スマートフォンなどモバイル・ディバイス向けの広告費が18年には1140億㌦に達し、パソコン向けの広告費を追い抜くと予測していることが特筆される。
また、グループMの予測は2社に比べ若干低めの4.5%増。特にインターネット広告が14%増と全広告媒体中群を抜いた拡大を示すことを強調していてる。
マグナ・グローバルによれば、15年における世界の広告費は5527億㌦。トップ25ヵ国で4957億㌦と、全体の89.7%を占めている。
世界最大の広告王国は引き続き米国。15年の総広告費は前年比3.6%増となる1826億㌦。中国が同8.7%増となる743億㌦で2位。3位には同2%増423億㌦で日本がランクされている。以下、イギリス(7%増、260億㌦)、ドイツ(1.7%増、252億㌦)、ブラジル(1.5%増、144億㌦)、フランス(0.3%減、131億㌦)、韓国(3.1%、122億㌦)などとなっている。
ちなみに、各社インターネット広告が著しく拡大していくという点で一致しているが、マグナ・グローバルは17年末に同広告がテレビ広告を追い抜くとみている。ゼニス・メディアは18年が分岐点になると予測している。
ゼニスによれば、15年の世界におけるネット広告費は11年の倍額、総広告費全体の29%となる1580億㌦に達するが、16年には21.9%に、17年には34.4%、18年には36.6%に拡大する。
米国内のネット広告費のシェアも17年に37%に達し、テレビ(36.6%)を凌駕する(米調査会社イーマーケッター)との見方が出ている。