コードカッティング拡大傾向が鮮明に

 米国のテレビビジネスにとって極めて重要なエコシステムを支えているペイテレビ加入者の5人に一人が2016年に離反する。こんな厳しい予想がこのほど相次いで発表された。

 コンサルティング会社大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によれば、2014年の調査時には全体の91%がペイテレビに加入していると答えたのに対し、16年は79%に減少する見込みだ。

 また、別の調査会社イーマーケッターは、15年にペイテレビを解約した消費者は約500万人。18年にはペイテレビ加入者が全体の75%にまで落ち込むとみている。

 

 ちなみに、年間1000億㌦規模ともいわれるペイテレビ・サービスとは、CATV(ケーブルテレビ)、衛星放送、電話会社が提供する地上波テレビの再送信とケーブル局などの配信事業のこと。米国テレビ世帯の89割が何等かのペイテレビに加入してテレビを見ているのが現状だ。

 テレビ離れ現象が顕著になっている昨今、ネットワークテレビやローカル局にとってペイテレビから徴収する再送信・配信料は広告収入のそれぞれ14%20%にも相当する大事な放送外収入になっている。

 コードカッティングの最大要因は値上がり傾向が収まるところをしらない加入料金。月額料金の全国平均は9910㌦(LRG調べ)にも上り、「見たくもないチャンネルが満載で(加入料が)高すぎる」と考える消費者のペイテレビ離れを誘っている。

 また、ネットフリックスに代表されるインターネット上の番組配信サービスをペイテレビの代替サービスとして利用する向きが急増していることも大きな要因だ。月額8㌦ほどを払えば、生番組は見れないがネットワークテレビの人気プライムタイム番組などが放送翌日には見られるとあって、特に若者層の間で人気うなぎ上り。ニールセン社によれば、1679月期におけるネット配信普及率は46%と、前年同期の40%から跳ね上がっている。

 生番組については、成人(18歳以上)の視聴時間が一日当たり4時間7分と、13年の4時間27分比5.2%減も減少していることが明らかになっている(ニールセン)。

 一方、PwCの調べでは、1824歳層の77%がインターネットを利用した番組視聴を経験するようになったが、同層は「ペイテレビに全く加入したことがない」いわゆる“コードネバー”グループの代表でもある。イーマーケッターは、コードネバー人口が18年には1980万人に達すると見込んでいる。

<テレビ朝日アメリカ 北清>