世界最大の動画有料配信サービス米ネットフリック(Netflix)がこのほど発表した2015年10-12月期決算は、会員数の大幅拡大を記録したことなどから売上高は前年同期比22.8%増となる18億2333万㌦を記録した。同期に獲得した新加入者は559万人。同社の予想515万人を上回る好調ぶりで市場の好感を呼び、株価は一時7%も上昇した。合計加入者数は約7500万人に達した。
純利益は、独自番組の制作費や海外市場への進出コスト、さらには広告費などがかさみ前年同期比48%の落ち込みとなる4320万㌦だった。減益は4四半期連続となるが、引き続きコンテンツ確保に大型資金を投入する戦略を維持、黒字転換は2017年を目標にしている。
会員数の内訳をみると、米国内の新規加入者数は156万人(合計約4500万人)と前年同期に得た190万人を下回った。その一方で、海外の新会員数は約400万人(合計約3000万人)と市場予想を上回った。ネットフリックスによれば、2016年1月現在、サービス提供を始めた国や地域は約130。重要ターゲット中国を除けば、ほとんど世界中どこでもネットフリックスが見られる状態になった。破竹の勢いを見せるネットフリックスだが、今後の課題は飽和状態に近いといわれる米国内市場においていかに拡大し続けるかだろう。
同社では成長エンジンの役割をオリジナル番組と映画に託しているが、今年は600時間分の新番組を編成する予定(15年は450時間)。今年の番組編成費用は60億㌦を見込んでいるほか、広報費に10億㌦、テクノロジー開発費などに8億㌦を計上している模様だ。
ところで、同決算発表の前に、カリフォルニア州パサデナで開催されたテレビ批評家協会(TCA)が主催する「TCAプレスツアー」でもネットフリックに大きなスポットライトが当てられた。同ツアーに先立って、米メディア企業大手NBCユニバーサルの調査部門責任者がネットフリックスが配信する番組の推定視聴率を発表したが、これを同ツアーに出席したネットフリックス幹部が“まったく不正確”とかみついた。人気うなぎ上りのネットフリックスはかねてから「我々は(広告支援型の放送事業ではないので)視聴率を発表するつもりはまったくない」と主張を続けているが、これを不服とする対既存メディアとの間に軋轢が生まれている。テレビ視聴者を奪われ始めているとの危機感から、同社に対する番組提供を見直す既存メディアも現れている。