米既存メディアがSVOD積極進出

 2015年の米メディア界は、SVOD(会員制オンデマンド・サービス)などと呼ばれる番組のインターネット配信サービスをめぐる動きが目立った年だった。留まることを知らないネットフリックス人気に触発されたものといえるが、特に既存メディアのSVOD進出が活発だった。いずれのサービスも放送されている番組が主要コンテンツだ。

 エミー賞に輝くドラマ番組を多数輩出している人気有料チャンネルHBO4月、同社のSVOD版「HBO Now」(月額14.99㌦)を立ち上げると、ライバルShowtime(ショータイム)も7月、「SHOWTIME」(月額10.99㌦)をスタートさせた。ちなみに、HBOのプレプラーCEO(最高経営責任者)は具体的な数字は公表しないとしたものの、「HBO本体への加入者が減っている事実は全くない」と述べ、既存ビジネスへの悪影響を真っ向から否定している。米調査会社モフェット・ネイサンソンは、同サービス加入者数について970,0001,900,000人と推定している。

 また、メディア企業大手ウォルト・ディズニーが11月、世界的なヒット作となったアニメ映画『アナと雪の女王』や傘下ケーブル局の人気テレビ番組などを配信する「DisneyLife」(月額9.99ポンド)をデビューさせた。同サービスは当面英国のみに限定されるが、近い将来、他地域へのサービスを拡大したいとしている。

 

 このほか、子供向けチャンネルの老舗「ニコロデオン」が3月、子供向け専門SVODNoggin」(月額5.99㌦)を始めたほか、スペイン語放送最大手ユニビジョンが11月、「Univision Now」を立ち上げるなど、既存メディアによるSVODサービスが目白押しとなった。

 一方、2015年はSVOD各社の間で、“CM嫌い”として知られる若者消費者を取り込もうと、CM無しのSVODサービス立ち上げが目立った年でもあった。この動きも、一切CMを挿入しないネットフリックス人気にならったものだ。

 大手メディア企業が共同出資するフールーが9月、“ノーCM版”フールー(月額11.99㌦)をお目見えさせたほか、世界で10億人以上の利用者を誇る動画配信最大手ユーチューブもCM無しで番組などが視聴できる「ユーチューブ・レッド」(月額9.99㌦)を開始。米メディア企業大手NBCユニバーサルは新年早々傘下のコメディー番組のみを集めCM無しで提供する「SeeSo(シーソー)」(月額3.99㌦)をスタートさせた。

 ちなみに、米国で2015年にオンライン・ビデオを視聴する人は18000万人に達する見込みだ(米調査会社イーマーケッター)。

<テレビ朝日アメリカ 北清>