CATV局、受難の年だった2015年

 「2015年は米ケーブル局にとって(悪い方向に向かう)分岐点となる年として記憶されるだろう」。米著名アナリスト、マイケル・ネイサンソン氏はこのほどこう述べ、米ケーブル局業界について悲観的な評価を下した。同氏の調べでは、昨年におけるベーシック・チャンネルの人気トップ10のうちプライムタイム(平日午後811時)視聴率が前年に比べ下回った社が7社にも及んだことが明らかになった。ちなみに、ベーシック・チャンネルとは、CATVや衛星放送さらには電話会社が提供するテレビ配信サービス(ペイテレビ)の加入者ならば追加料金なしで視聴できるチャンネルを指す。

 そして、プライムタイム視聴率低下でケーブル局業界の懸念材料となっているのは、ケーブル局にとってこれまで編成の柱だった地上波テレビ番組の再放送が飽きられ始めていること。それに若者層の間で人気急上昇中のネット配信サービスの隆盛だ。

 

 さらには、広告主がターゲットにしている若者層の間で拡大しているケーブル局離れ、いわゆる“コードカッティング”に対する懸念も広がっている。

 若者向け人気チャンネルFXの調査部門からは、地上波テレビやケーブル局に加えネット配信サービスを含む様々なテレビ・プラットフォーにに合計40009年比ほぼ倍増)を超えるオリジナル番組があふれかえり、供給過多になっている事情も指摘されている。

 視聴率が低下したケーブル局の中でも、特にバイアコム傘下のチャンネルが悲惨だ。若者向けチャンネルMTVは視聴者数が前年比26%も減少したほか、コメディー・セントラルが21%減、子供向け老舗チャンネルニコロデオンは24%減、といった具合だ。

 だが、明るいニュースがなかったわけではない。保守系ニュース専門局Foxニュース・チャンネル(FNC)は、米大統領選の党指名争いに名乗りを上げている候補による討論会番組がいずれも記録的な視聴率を得たことが大きく、平均視聴者数は前年比3%増となる184万人。他ニュース専門局を圧倒したほか、全ケーブル局中2位につける活況を呈した。CNNも同39%増と大健闘したが、平均視聴者数はFNCの半分以下。

 ちなみに、1位はディズニー傘下のスポーツ専門局ESPN。年間平均視聴者数は前年比7%減の212万人だった。3位はNBCユニバーサル傘下の総合編成局USAネットワーク、平均視聴者数は同16%減となる180万人だった。総合局としては10年連続で1位にランクされている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>