FOX、ドル高DVD販売不振で減収

 世界のメディア王ルパート・マードック氏率いる米メディア娯楽複合企業「21世紀フォックス」(以下、フォックス)がこのほど発表した2015912月期決算は、映画関連部門の不振に加えドル高による予想外の外国為替相場の変動が足を引っ張り、売上高は前年同期比1%減となる738000万㌦におわった。昨年6月、父親から同社のCEO(最高経営責任者)を引き継いだジェームズ・マードック氏は決算報告の中で、同2つの要因によるマイナス効果が向こう6カ月間は続き、短期目標が達成できないとの見通しを示した。利益見通しの下方修正を嫌い株価は一時5.8%の下落を見せた。

 前年同期は衛星放送スカイ・ドイツェランドとスカイ・イタリアの売却という特殊要因があったため621000万㌦を記録した純利益は67200万㌦と大幅に減少したが、減益幅は市場の予想に沿ったものだった。

 部門別で見ると、相変わらずグループを代表する稼ぎ頭となったのがケーブル局を束ねる「ケーブル・ネットワーク・プログラミング」部門。スポーツ専門局FS1やニュース専門局Foxニュース・チャンネル人気をテコに、広告収入が3%増となったほか、ペイテレビ・サービス(CATV、衛星放送、電話会社が展開する映像配信)から徴収する配信料が10%増となったことなどから、売上高は前値同期比9.4%増となる37億㌦に達した。マイナス要因としては、FS1などが放送するスポーツ物件の放映権料の高騰、若者向けチャンネルFXの視聴率低下などが挙げられている。

 地上波テレビFoxネットワークなどを包含する「テレビジョン」部門の売上高は同5.7%増となる172000万㌦。Foxネットワークが放送するヒップホップ・ドラマ『エンパイア』が相変わらず高視聴率を引き付けていることやNFL(米プロフットボール・リーグ)試合の中継番組がすこぶる好調なことなどを背景に広告収入が4%増となったことなどが寄与した。懸念材料には、ケーブル局同様スポーツ放映権料の高騰などが挙げられている。

 一方、ケーブル・ネットワーク・プログラミング部門につぐ基幹事業となっている「フィルムド・エンターテイメント」部門は、世界的なヒット作となった『ザ・マーシャン(邦題:オデッセイ)』が貢献したものの、映画のDVD版販売などが不調だったことが大きく響き、売上高は14.2%減の236000万㌦に落ち込んだ。ドル高で海外市場での売り上げが3%減少したことも指摘されている。

<テレビ朝日アメリカ 北清>